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赤い花 -本浪隆弘写真展「こころね」開催に寄せて


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by 高崎健司

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本浪隆弘写真展「こころね」開催に寄せて、代表からのメッセージを綴りました。


WABARAとはじめて出会ったとき、中国の「花は紅、柳は緑」という詩を思い出しました。

木々は緑であり、花は紅である。

木々や草花は、自然の中にあるありのままの姿が美しく、人間も自然の一部として他人のあるがまま、自分のあるがままを受け入れて生きることが理想であるという禅の考え方に通じる詩。

野に咲く草花としてのバラを作りたいー。そんな気持ちで、滋賀県にある琵琶湖のほとりの農園で、戦後間もないころから親子3代にわたって気の遠くなるような日々の時間を積み重ねながら生まれた、日本の風土に合わせた美しさを持つ和のバラ、WABARA。

何年か前に、その農園を案内してくれた日々土と向き合っている人は、笑いながらこう教えてくれました。

「自然だって醜いですよ、自分のことばっか考えてるし。でも人間でも自然でも闇を抱えてるほうが美しいと思うんですよね。」

わたしはこういう人間だ。

他人はこういう人間だ。

わたしはこうあらねばない。

私達はそうやって自分で作った世界像の中を生きていて、そして人はそういった色眼鏡で世界を見ることで容易に、「今、ここ」にある自然から切り離されてしまう。

「今、ここ」にある、あるがままを、色眼鏡を外してみたときの世界は、闇を抱えているけど美しい。

そんな風に言われているような気がしました。

その日から、いつか自分がギャラリーを始めることがあれば、一番最初の展示はWABARAの展示にしたい、という気持ちを持ち続けてきましたが、皆様のご協力があって、暖かい視点でバラ農園にある光を柔らかく切り取ってきた写真家、本浪隆弘さんとこの展示を作り上げることができました。

1772-1801年、ドイツに生きた詩人のノバーリスの作品に「青い花」という未完の小説があります。

主人公の詩人が、夢に出てきた美しい青い花に出会いたいと思い各地を巡る様を、美しい詩で彩った幻想的な作品です。

わたしはこういう人間である。

他人はこういう人間である。

バラはこういう花である。

そういう色眼鏡を外して、自然の中を生きているあなたが、自然の中を生きる赤い花と出会ったとき、どんなことを感じるのか。

人も花も生まれてきて、よりそい、ときに奪い合いながら、いつか朽ちていく。

その様すべてが自然であり、美しい。

そんな展示になっていたら嬉しいです。

最後に、この展示に関わってすべてくれた方に心から感謝します。

写真・文 
yori.so gallery & label 代表 高崎健司

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高崎健司

yori.so gallery & label代表。心の中にある繊細さを、誰かを傷つけるためではなく、誰かと関わるために使う生き方を助けるために、ギャラリーと出版レーベルを運営してます。

1983年、千葉県生まれ。2005年、国際基督教大学卒業後、ソフトバンク(株)入社、2009年に独立。2011年、non-standard world株式会社を起業。