ドキュメント“ものをつくるということ”

ドキュメント“ものをつくるということ”|デザイナー・NSSGRAPHICA 町田宗弘 vol.2『お客さんに応じて最適な答えを出す』

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気合いを入れた独立ではなく、流れ

帰国後は、ウェブ制作会社に就職。仕事としてのはじめてのものづくりは、純粋に楽しかったという。3ヶ月の契約期間を終えると、別のウェブ制作会社に転った。会社の規模は小さいが、扱う案件は大手の企業サイト。忙しくて家に帰れないような日々を送った。一年経たないくらいで、そんな生活に疲れてしまい、別のウェブ制作会社に転職。人数の少ない会社だったため、打ち合わせ、ディレクション、デザイン、交渉、ウェブ制作会社の全ての仕事の流れを一人で請け負うような仕事だった。自分一人で一つの会社をまるごと担当できたことは、その後の独立がスムーズに進んでいった要因になったと町田さんは振り返る。いい意味で自分勝手にやれたことが、自然と力になっていたようだ。

3年勤めた後、独立を決める。ただきっかけは何もなかったという。会社に勤めながらNSSGRAPHICAとして、友人のバンドのウェブサイトなどを自宅で制作していた。「会社にいつつもフリーでやっていた感覚があったので、『そろそろ辞めようかな』と会社の人に言ったら『ほんとに辞めれば』みたいな感じだったので(笑)。あまり気合い入れて独立したとかではなく、流れですね。」

音楽、バンド、それに関わる人やコト。そういった目の前のことを大切にしていくことで、自然とその人が生きる「流れ」のようなものが生まれていくのかもしれない。その流れは、独立後も淡々と続いている。

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“Lose My Breath for M/M/M FIRST EXHIBITION”/June, 2013

お客さんに応じて最適な答えを出す

独立して間もない頃は、友人づての仕事の依頼を受けていたが、会社時代の繋がりや、オフィシャルサイトを見て連絡をくれるような人など、 徐々に友人以外の仕事も増えてくるようになった。レーベルのデザイン部門として始まったため、音楽関連の仕事が多かったが、だんだんとその幅は広がっていった。一つの仕事が、次の仕事を連れてくる、という状態になるのは、きっとお客様の期待を上回る仕事をしたからなんだろう。町田さんにお願いしたい、そう思わせるものが必ずあるということだ。

デザイナーには、その人の個性が色濃く出るタイプもいれば、町田さんは目の前のお客様の色を徹底的に考えるタイプのように見える。「完全にお客さんに応じて最適な答えを出そうとしているので自分のテイストみたいなものや、僕はこうしたいみたいなのはそんなに強くないと思います。」それは、例えばお客様が具体的な内容でオーダーをしてきたとしても、それが本当に正解かどうか見極める、別の方法がないか探していくのだという。

「誰かのためになにかを作って世に出す、ということには大きな責任が伴ってくるので、どんなメッセージを伝えるのか、どういう表現にするか、どういう風に作るのか、それは正しいのか、それは最適な方法なのか、などは毎回悩みます。」ただ、「悩む」というより「考える」に近いと言葉を直す。そして考え続けることで、徐々に答えが見えてくるのだと。

言われたとおりの仕事をきちんとこなすことももちろん大切だろう。しかし、きっとそれでは次の仕事はやってこない。町田さんは「お客様に応じた最適な答え」を常に探している。その結果うまれた「こうしたらいいのでは」という提案を何度も続けていくうちに、お客様も広がり、自分に対する自信にも繋がったと話す。

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“there is a light that never goes out EXHIBITION”/July, 2011

削る作業

デザインにおいては、自分のテイストは強くないとは言うものの、大切にしているアプローチ方法はある。それは「削る作業」だ。「デザインするときすっごい削ってくんですよ。何にもデザインしてないんじゃないかくらいまで。ただの飾りは付けないとか。サイトでも何でも余分な要素を入れないようにデザインしていく。」

ミニマルとシンプルは似ているようで違う。町田さんのデザインは前者のほうだろう。ぎゅっと凝縮された表現の中に、お客様の想いを映し出し、お客様の向こうにいるお客様の顔も思い浮かべる。この難しさこそが、仕事の楽しさだと、少年のような純粋な笑顔で町田さんは話す。

町田さんは、きっとデザイナーとしてものすごく才能がある人なんだろう。「才能は自分の中ではなく、社会の中にある」という山田ズーニーの言葉を思い出す。目の前の人やことを大切にすることで、社会の中にある自分の才能が見えてくるのかもしれない。時には大それた夢を語るのだっていい。憧れはいくらだってある。ただ、忘れていけないのは、隣にいる家族のことだったり、仕事の仲間だったり、ようは目の前にいる人間のこと。その人を、自分は幸せにできているだろうか。その答えに、私が進んでいきたい光があるような気がした。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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