ドキュメント“ものをつくるということ”

ドキュメント“ものをつくるということ”|デザイナー・NSSGRAPHICA 町田宗弘 vol.1『自分と自分の周りの人たちを幸せに』

町田宗弘さんと初めてお会いしたのは、どしゃぶりの吉祥寺だった。梅雨のど真ん中とでもいうのか、待ち合わせのスタジオまでの道のりで、すっかりスニーカーの中までぐしょぐしょになってしまった。雨に濡れながら、私はこれから初めてお会いする町田さんがどんな人物なのか、プロフィールを思い出しながら想像をしていた。

NSSGRAPHICA(エヌエスエスグラフィカ)は、ブランディングを軸に、広告・音楽・ファッションなどの分野で活躍をしているデザインスタジオだ。町田さんはこのデザインスタジオを立ち上げ、アートディレクション・グラフィックデザイン・ウェブデザイン・ブランディングなど幅広く活動している。

HPで過去のポートフォリオを見る限り、とてつもなくカッコいい。きっと、おしゃれなメガネと帽子を身に付けているような「The・デザイナー」な風貌なんだろうと、独断と偏見による勝手な想像を膨らませながら、町田さんの待っているスタジオの扉を開けた。

「はじめまして」。ひと目みただけで、肩の力が抜けてしまった。「想像と全然違うじゃん!」と胸の中で叫びながら、私はホッとしていた。町田さんは、人見知りな私から見ても、かなりシャイ。話すテンポも穏やかで、ときどきはにかむ笑顔がとても優しい。

ウェブ制作会社を経て独立して8年。この世界でここまで続けていくこと、ましてや活躍することは、とても厳しい。同業者として、独立して生き残ることの厳しさを知っているからこそ、穏やかな笑顔の奥には何があるんだろうと、惹き付けられながらインタビューを始めた。

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京都で暮らしながら働く

町田さんは2年前から仕事と暮らしの拠点を京都に移している。東京にくるのは1ヶ月に1~2回。京都と東京を往復しながら、都心にいるクライアントの制作を引き受けている。京都での生活について聞くと「のんびりしていていいですよ~」と穏やかな笑顔が返ってきた。東京での生活より、自然との距離が近く子どもたちものびのびと暮らしているという。毎日ほぼ17時半には自宅に帰り、家族と共に夜ごはんを食べる。まだ小さな子どもたちの成長を肌で感じることができる暮らしは、とても充実しているようだ。

家族との時間も大切にしながら、自分の好きな仕事で稼ぐ。この二つのバランスで、私も含め、きっと多くの人が悩んだり、迷ったり、考えたりしているんだろうと思う。両方のバランスを保っている町田さんの姿は、こんな風な暮らし方が実現可能なんだ!という一つの希望に見えた。

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自分と自分の周りの人たちを幸せに

ウェブ制作会社は日本中を数えたらいくつあるんだろう。きっと1年に何社もの小さな会社が生まれては消えていっている。そんな中で、独立してから8年間続けてこれた理由を町田さんに聞くと、マイペースにやりたいと思ってきたからだと言う。マイペースというと、自分が中心の言葉のようだが、どうやら町田さんの場合は少し違うようだ。ちょっと照れ臭そうに、こう付け加えてくれた。「自分と自分の周りにいるスタッフとか、家族とか、一緒にお仕事をさせてもらっている人たちが幸せになるようにやれてればいいな。」

町田さんのマイペースというのは、目の前にいる人たち、自分の手の届く範囲にいる人たちを大切にできる「進度」と言えるのだろうか。その進み方、歩み方は、大学時代から変わらないようだ。

レコードレーベルのデザイン部門が出発点

大学時代は、もともと音楽が好きだったこともあり、実家からはなかなか行くことのできなかったライブに行くようになった。そして自分のバンドを始めることに。バンドのフライヤーやレコードのジャケットのデザイン、ウェブサイト制作などを手がけるようになり、遊び感覚でやっているうちに楽しさを覚えていったという。

大学4年生頃には自らレコードレーベルを立ち上げ、友人のバンドをリリースしたり、自分のバンド以外のデザイン関連の制作を手がけるようにもなる。始まりは「音楽好き」という小さな“点”だったが、いつの間にか人やコトと繋がり“線”になってきた。

大学卒業後はデザインをやりたいという気持ちから、ロサンゼルスにあるデザインの専門学校に進学を決め、2000年~2001年の1年間、サンタモニカで過ごした。アメリカでは、自分のレーベルのアーティストや友人のアーティストなどのウェブサイトを制作。この時点では、ほぼボランティア状態。ただ「NSSGRAPHICA」という屋号で活動をすでに始めていた。好きなバンドの曲名の頭文字。レコードレーベルのデザイン部門という意味で「GRAPHICA」をくっつけた。それが、現在のNSSGRAPHICAの出発点だ。それは、大学時代から徐々にできた“線”が“面”になっていく、始まりだった。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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