ドキュメント“ものをつくるということ”

ドキュメント“ものをつくるということ”|写真家・公文健太郎 vol.2『自分だけしかもっていない、人との関係性に自信をもつ』

こちらの続きです)

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息子になる

これから先追っていきたい大きなテーマに「農家」というものがある。クライアントワークを通じて出会った農家さんが、日本のあちこちにいる。公文さんと農家さんのやり取りの話を聞くと、それはまるで家族のようだ。「仕事の合間に電話をしたり、どこかへ行ったらものを送ったり。佐賀県のレンコン農家さんから2週間に1回くらい届く、ダンボールいっぱいの野菜がふるさとって感じるようになってね。」

そこには、公文さんいわく「息子になる」という気持ちがある。しかしそれは決してはじめからではない。ある編集者との出会いがきっかけだった。一緒に仕事をした時、自分が思っていたコミュニケーションとは違う撮り方で、どんどんと相手に入っていくような人だ。

「たとえば農家さんのお家にお邪魔した時、一瞬で本当の娘になっちゃうんです。『おかあさんお茶入れますね~』って勝手に冷蔵庫を開けちゃう(笑)。自分もそうしたらいいのかなと思って。それまでは(被写体に対して)ある一線を超えてはいけないのではないか、聞いてはいけない部分があるんじゃないか、そもそもここでは靴を脱いでいいのか、とか気になっていたんだけど、今では息子になるつもりで相手と関わってます。大事にしたい関係なので。そして必ずもう一回会いに行く。そこが大事ですね。」

農家のお父さんやお母さんの話をする公文さんは、2人の息子さんの話をするときと同じ顔をしている。大切な存在について人が語るときの、愛情がにじみ出ているような表情だ。どれだけ相手のことを想っているのか、伝える一番は「もう一度、会いに行くこと」かもしれない、と思えてくる。それは訪れていない時間の中で、相手のことを想っていることだから。

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僕のしたい表現はこれだっていうのが撮れた

多忙な生活の中での気分転換の方法を聞くと、車での移動中に農家さんに電話をかけることだという。無理に距離を縮めようとしているのではなく、ごく自然体に相手との関係を大切にしていることがよくわかる。ネパールも農家も、自分にしかできない関係を築くことができるようになってから、クライントワークとライフワークの境目は消えてきたという。「いろんな人に教えてもらったことは武器になっています。」公文さんは、力強くそう言う。

例えば、ある人間国宝の作家さんの写真を撮ったときのことを教えてくれた。
「それまで2回ポートレートを撮ったんですけど、どうもしっくりきていなくて三度目の正直で臨んで。制作風景を撮ってても、その方の魅力である優しさとか笑顔が全然出なかったんです。一旦撮影を切って、工房の横の座敷に座って、作品を手に持ちながら、なんでもない話をして。『●●さん、お豆好きって聞いたんですけど~』っていう話から、僕が知っているレンコン農家さんの話をして『へ~』って言いながらその時に撮った写真がすごく良かったんですよ。その方の素の表情が見えて、僕のしたい表現はこれだっていうのが撮れた。」

クライアントワークで関わった人から教えてもらったことを生かして、他の現場で人との関係を築くことができたという瞬間だった。それこそが公文健太郎にしかできない仕事であり、作品であるということだ。

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人との関係性に自信を持つ

写真家として生きていくことを決めた初めの頃は、写真集を出したい、賞をもらいたい、展示会にはたくさんの人が来てほしい、そんな想いがあった。しかし今は、他人の評価も名声も興味がなくなったいう。自分の作品をたくさんの人に見てもらい、何かを伝えたいという強い願望もないと言うのだから、思わず「もっと伝えましょうよ!」と今回のインタビューを申し込んでしまった。ただ、インタビューをしてわかったのは、公文さんの目の奥に揺るがないものがあるように、周りの声に決して揺れ動かされない信念が、胸の中にしっかりあるということだった。

「良い写真の定義って人それぞれだと思うんですけど、僕は、残る写真だと思うんです。ネパールのあの場所をこういう形で撮っている人はいないから、絶対残る。一生かけて残すような写真を撮るには、自然体で撮らなくちゃいけないし、相手に入っていかないといけないし、どんな環境でもきちんと撮れなくちゃいけない。技術的に撮りたい方法で撮れるようになると、人に何を言われてもどうでもいいやって思うようになる。
今は、自分だけしか持っていない、これまで築いた人との関係性に自信を持とうと思っていて。あまりいろいろ考えるより、ネパール、農家というテーマも、今持っている関係に自信を持っていれば自然と終着点が見えるはずだと信じてる。そしてそのためにも『通おう』と思う。」

ネパールで撮り続けているゴマも、ゴマの娘の成長も、同世代の友人たちのその後も、日本各地にいる農家さんも、追っているものはまだまだ未完成だと公文さんは言う。そして未完成のまま続けていく。
離れた地にいる誰かのことを思い出しながら、ときにはその人の言葉を借りたり、声を聞くために電話をしたり、なにかを贈り合ったり。そして「もう一度会いに行く」ことを積み重ねながら、これから先も撮り続けていく。

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公文健太郎さんのWebサイトの制作をnon-standard worldで手がけさせていただきました。
詳細はこちらをご覧ください。


お知らせ

FóotKat (フォットカット) –路上の洗濯屋– 公文健太郎写真展

■ 開催期間
2013年9月13日(金)〜9月25日(水)12:00~19:00
※日・祝は18:00まで、最終日は17:00まで。19日(木)休廊。
※9月13日(金)17:00〜 トークショー(無料 ・先着順)、18:30〜 オープニングパーティー(無料)

■ 会場
早稲田スコットホールギャラリー


公文健太郎WEBサイト: http://k-kumon.net

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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