ドキュメント“ものをつくるということ”

ドキュメント“ものをつくるということ”|写真家・公文健太郎 vol.1『もう一度、会いに行く』

写真家・公文健太郎さんを東京でつかまえるのは難しい。はじめての打ち合わせのとき、提示された候補時間と場所には、少々驚いた。

20時半~22時 @羽田空港
または
22時~23時半 @××××

公文さんは、ほぼ毎日地方へ行って帰ってきてというタッチアンドゴーの状況らしい、と聞いていた。打ち合わせのその日も、たしか秋田から帰ってきたばかりで、次の日には九州のどこかへ行くという。2回目の打ち合わせも、東京にいるほんの数日間から、どうにか時間をつくってもらえたようなものだった。

仕事の合間を縫って、地方や海外へ作品を撮りに行くような生活。国内外を飛び回って、さぞお疲れだろうと思いきや、公文さんはもの凄く元気で明るい。 見た目のせいもあるのだろうか。真っ黒に日焼けした肌と、スポーツ選手並にがっちりとした体つき。「365日中、300日は地方に行ってるね」と言いながら、ハハハッと笑う。そして人の目を真っ直ぐに見る。自分の心の奥まで見透かされそうなその目は、とても澄んでいて揺るがない何かを秘めているようだった。

_DSC0164_DxOFP

もう一度、会いに行く

公文さんはリゾート観光や伝統工芸に携わる作家の写真など、雑誌・書籍・広告の撮影で活躍しながら、自らのライフワークとしてネパールで出会った同世代の友人たちや、日本各地にいる農家さんたちの姿を追っている。公文さんは自身を“人寄り”の写真家、だと言う。作品の中には、美しい農村風景の写真などもあるが、やはり目を引くのは人物写真。こんな至近距離で撮ったのかと驚くような、ドアップでカメラを見つめる農家のおじさんの写真や、少し憂鬱そうにベッドに横たわっている女性の横顔など、被写体のありのままの表情や、そのときの光、空気が、公文さんの撮る写真には切り取られている。

人物写真は、被写体とカメラマンの関係を映し出すものだと思う。というより、隠せないほど正直に映ってしまうものだとさえ思う。そうすると、公文さんの人との関わり方がとても気になった。なぜその瞬間を、なぜその表情を、なぜその場所で、撮ることができたのか。その根っこにあるものは、どうやら「もう一度、会いに行く」ということのようだ。

_DSC0149_DxOFP

ケンタロウ、またきたか

公文さんの写真家としての一つ目のテーマは「ネパール」だ。大学1年生のときから通い続けて14年。ネパールを撮るきっかけになったのは、中高時代の寮生活で同室になったネパール出身の友人に、故郷に遊びに来ないかと誘われた旅だった。2週間の滞在期間中、1日だけ友人のお父さんが街から少し離れた村へ連れて行ってくれた。その風景に惹かれ、人に見せたいという想いから、翌年からはカメラを持ってネパールへ足を運ぶようになる。

村の人にとっては、初めは物珍しい外国人旅行者。ほとんどの旅行者は「バイバイ、またくるね」と別れて二度と訪れることはない。しかし公文さんは違った。次第に「どうせ帰ってくるしね」「ケンタロウ、またきたか」と言われるほどに、その距離は縮まっていった。

通い続けていく中で、その後の公文さんの作品の軸となるある女性の大きな転機に立ち会うことになった。「ゴマ」という名のその女性を撮るようになったのは、遡ること8年前、突然決まった結婚式の写真を撮る、というものだった。

ネパールでの結婚は突然決まる。たまたま公文さんが滞在していた期間に、ゴマが来週結婚するというのだ。それまで彼女が恋愛結婚したいと話していたことを知っていたし、式の前日には結婚したくないとも言っていた。しかしゴマは「娘が早く嫁げば、親は來世で幸せになれる」という慣習に従い、親のためを思い結婚を決めた。

_DSC0160_DxOFP

夜空の星より大地の花をください

式の前日に、公文さんがゴマから受け取った手紙があるという。手紙の最後には自作の詩が綴られていた。『夜空の星より 大地の花を私にください お金や財産はいりません 友だちの愛があればそれでいいのです』。そこには、公文さんが村に通い続けていく中で、いつのまにか相手と共に育てていたものが、映し出されているようだ。そして今現在も、彼女を追いかけて作品が展開している。

ネパールで見つけた「同世代の友人たちの揺れ動く姿を追う」というテーマは、撮り続けていく中で偶然生まれたものだという。ゴマも、まさか撮るとは思っていなかった存在だ。「長く続けることしか能がないから」と笑って話す公文さんの姿は、続けていくことで生まれるなにかがあり、続けていくことでしか生まれないなにかがあることに、確信と自信をもっているようだ。


vol.2へ続く


公文健太郎WEBサイト: http://k-kumon.net

おすすめ

作家・小谷ふみさんの書籍を出版し、売上の10%を入院中の子どもたちを支える団体へ寄付するプロジェクトに向けた、クラウドファンティングを実施中です。こちらよりぜひ一度ご覧ください!


料理家cayocoさんが、春夏秋冬の旅を通じて人・食材・土地と出会い、その土地の保存食をバトンに食と人をつなぐ「food letters」、その旅とレシピ本の特典付き先行予約が始まりました!詳しくは、こちら


オンラインショップではよりそう。でしか買えないアートグッズやお花を取り揃えています。こちらよりぜひ一度ご覧ください!

この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocket
  • Lineで送る

記事への感想を送る

いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

メッセージ

このフィールドは空のままにしてください。