ドキュメント“ものをつくるということ”

ドキュメント“ものをつくるということ”|作家・寺井暁子 vol.2『共感じゃなくて共鳴する』

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共感じゃなくて共鳴

旅に出ることを決めていざコンサルティング会社を辞めると、はじめての無職の状態に気分が落ち込み、旅に出るまでは足が重かった。当時は世界一周チケットが安くなっていることもあり、周りには世界中に旅立っていく人たちがいた。旅のテーマや目的を明言して、Twitterを通じて社会から共感を集めたりしながら旅に出ている人たちを見ると、自分が唱えられる「旅の目的」は何かを考えたりもした。でもそれはどこか違う、と心の中の自分が答える。

「旅に出る前に決めていたことがあって、共感じゃなくて共鳴しようと。共感はちょっと一面的だと思うんです。相手のアイディアやプロジェクトに対していいね!って言ったり、何か協力しようとしたりするとき、そこには自分が相手の「やっていること」に対して共感できるかできないかの判断が入る。それがしっくりこなくて。それよりも相手の「生きる」そのものに触れたかった。一生懸命生きながらも、日常の些細なことで揺れている。何かが形になろうとしているけれど、迷いや疑問や戸惑いも一緒にあって、立っている地面はどこか揺れている。そういう相手の揺らぎをそのまま共有することが共鳴じゃないかって。私はそれをしたいんだって。決して誰のことを良いも悪いも言いまい、って決めていました。」

10年という時を経て、友人たちに会いにいく。そこでただ共鳴して一緒に揺れてみたい。その想いだけを胸に、旅に出た。

空気の揺れを一緒に共有する

10年ぶりの再会。ただの同窓会でさえ人は構えるもの。わざわざ会いに来る友人が自分との再会を題材に物語を書くと言えばなおさら構えてしまう。はじめの1回だけ、再会した友人にインタビュー形式で卒業後の人生や近況を聞いたところ、寺井さんはすぐに「これは違う」と思った。旅は、再会した相手と3~4日の間ひたすら一緒にいる、ただそれだけを繰り返すものに変わった

「一緒にいると、最初の日は相手も緊張してるんです。かっこ悪いところ見せちゃいけないって思うのか、もてなさなきゃと思ってくれるのか、しゃきんと見栄をはってくれたりして 。でも3日目頃になるとポロっと本音が出てくる。『眠れないんだよね』とか、『失恋したんだ』とか。鎧がポロッと剥がれる瞬間がある。次第に相手は私に話かけているようで、自分自身と対話を始めるんです。 そうなると私は私じゃなくなって、相手の一部になる。その瞬間に居合わせることが好きなんです。」

そう話す寺井さんの目の中には、その瞬間が今でも映っているようだ。眩しそうに、うっとりとした笑顔でこう続ける。「私はただそこにいる。空気みたいになっていて。 すると相手の弱さと強さと美しさがわ~っと出てきて。 そこにある空気の揺れを一緒に共有している感覚です。」

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自分が美しいと思えるものを集めていけばいい

ひとり、またひとりと友人たちとの時間を重ねることで、旅に出る前に頭の中でぐるぐると考えていた「旅の意味を唱えること」に、いつしかこだわらなくなった。周りにわかりやすい旅の目的や社会貢献の理由はなくていい。自分が美しいと思えるものを集めていけばいいのだ、と。

そしてそれはずっと前から知っていたことだった。「誰かのかっこいい話が人を勇気づけると思ってなくて、人の弱さに触れたときに、勇気と安心をもらえる。誰かの閃きに触れるときより、誰かの悩みに触れるときのほうが、優しくなれるし、ともにがんばろうって思える。 そんなやわらかい出逢いの積み重ねが、相手の心を想像する優しい世界をつくるのだと思う」

根底にあるのは17歳の思春期という、人生の中でも大きく揺れる時期を共に過ごした友人たちとの時間。その中で、不器用にしか生きれないからこそ、飾らない自分で相手と向き合えることの、美しさを知っていたのだ。

最後に出てくるのは強さ

友人たちとの時間を振り返ると「芯をわけてもらった気がする」と寺井さんは話す。相手に鎧を取ってもらうためには、まずは自分が鎧を取らなくてはならない。ただ相手の話を聞き出すだけでなく、自分の弱さもさらけ出した。それは、お互いに自分の絡まった糸を解く作業をするような時間だった。ときどき相手の糸を解く作業を手伝ったり、手伝ってもらったり。

そしてただ弱さをさらけ出すだけでなく、最後に出てくるのは強さだった。「剥がれ落ちていろんなこと話してくれると、最後は自分の芯に関わることが出てくるんです。同窓会の近況報告では決して言わないこと。それが美しくて、その場に居合わせると、幸せで胸がいっぱいになっていました。」

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旅は、そんな会話をたくさん紡いだヨーロッパ、北米を経て、イスラエル・パレスチナ、エジプト革命、その後の南米へと続き、東京へ戻る。帰国後してすぐの頃は「説明しなくちゃいけない、どう話そう」という戸惑っていた。はじめは、社会が変わる瞬間を見たエジプトに関わる話ばかりしていた。自分が美しい、幸せだと思う瞬間を過ごした旅の前半部分は、話そうとすると繊細さや美しさを損ないそうで、上手く話せなかった。そんな時、クルミドコーヒーにてカフェのオーナーである影山知明さんと出会い、予想もしていなかった出版の話が舞い降りてくる。

チリ留学のときは未完成で終わってしまったが「今度こそ書くんだ」と決めた。そしてここから「本を書く旅」が始まった。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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