優しく生きるー 津屋崎に住む友人たちを訪ねる旅

特集|優しく生きるー 津屋崎に住む友人たちを訪ねる旅 〜プロローグ 旅のはじまり〜

はじめて津屋崎に行ったのは、今から3年前の秋。福岡県の北部に位置する福津市津屋崎という、海沿いの小さなまち。それから年に1〜2回はかえる場所となっている。私にとっては「かえる場所」。親戚が住んでいるわけではない、自分のルーツとは全く縁もゆかりもない土地。それでも「おかえり」と言ってくれる友だちがいる。「ただいま」と言いたくなる風景がある。

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優しく生きるということを探す旅へ

4月21日土曜日。まだ外が暗い朝5時。眠そうな息子を起こして、羽田空港行きのバスに家族3人で乗り、3泊4日の旅が始まった。津屋崎を訪れるのは、約1年ぶり。「春にお祭がある」という話は前から聞いたことがあった。今回はそのお祭に遊びに行きつつ、友人たちを訪ねてあることを聞こうと考えていた。

津屋崎を訪れる度に毎回思うのは「優しく生きたい」ということ。それは津屋崎に滞在中というより、帰ってきたほうがより鮮明に感じる感覚。
たとえば、掃除機を丁寧にかけたくなる、メールの言葉を大切に選ぼうとする、いただきますの挨拶をしっかりする、などなど。それはとても小さくて些細なこと。けれども、日常のその小さくて些細なこと一つ一つに優しくなれる。この感覚ってどこからやってくるんだろう、とずっと思っていた。

津屋崎には、観光名所も名産物も際立つものはないし、正直毎回着いたその日は「あれ、こんな感じだっけ」とさえ思う。なのに、一日一日過ごすにつれて、じわじわと好きになっていく。ばったり出会った友人とのお昼ごはん、おすそわけの野菜、神社で遊ぶ子どもの声、古い町並みの石畳、海に沈む夕陽。そしてそこで過ごす自分のことも好きになっていく。この感覚をどうやって人に伝えることができるんだろう、とずっと思っていた。
東京に戻ってうまく説明できない自分にもどかしさも感じながら。

「この感覚」が何かを考えたとき、津屋崎で暮らしている友人たちから出てくる言葉を聞きたいと思った。「優しく生きる」ということがどういうことなのかを探しながら。きっと優しさの裏側には強さもあるはず。

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『優しさに纏わる物語』と『強さに纏わる物語』を聴かせてください

東京を出発する前、メールで友人たちへ投げかけた質問は、「 津屋崎で感じた『優しさに纏わる物語』と『強さに纏わる物語』を聴かせてください。」というものだった。そして「 あなたの好きな『津屋崎』と写真を撮らせてください。」というお願いも添えて。
何日の何時に取材時間をください、という約束はほぼせずに東京を出てきた。それは着いてからの、津屋崎時間に任せようという、過去の旅から学んだ、津屋崎ならではの旅のあり方だ。

福岡空港には9時過ぎに到着。地下鉄で乗り換えて、博多駅から運良く快速をつかまえることができた。JR鹿児島本線に乗って福間駅まで約15分。10時にはお祭の会場である津屋崎千軒に着いた。

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「よっちゃん祭」という名前のそのお祭は、津屋崎の方言で「寄って行って頂戴」という意味をもつ「よっちゃんさい」。気軽に来て楽しんでほしいという想いも込められているそうだ。お祭は、漁港付近から津屋崎千軒へ続くエリアで、活魚や特産物が販売されたり、境内や民家の駐車場、普段閉まっているお店などのスペースを使って、食べ物や手作り品などの露天が立ち並ぶ。

魚のすり身を揚げた天ぷら、紫芋まんじゅう、イカの炭火焼、鯛めし、手づくりスコーン。どれで胃袋を満たそうか、張り切って散策をしていると、古い酒蔵のスペースでコーヒーを売っていた繋ぎ屋珈琲というカフェを営むオーナー夫妻に出会う。彼らとは1年半前にはじめて家族3人で訪ねたとき出会った。「大きくなったねえ!」子どもを見て眩しそうな笑顔で声をかけてくれる。一度しか会ったことがなくても、二度目に会うときはもう親しみの気持ちが沸き上がってくるのが、この場所で出会った人たちのもっているもの。

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ばったりの連続

石畳を歩いていると、今回の旅で取材をお願いしていた木村航さんにばったり。彼が携わったプロジェクトの参加者の店の前で、餃子を宣伝していた。前日の冷たい雨で風邪気味らしく、鼻声ながらも楽しそうにお客さんを呼び込んでいる。

波折神社の境内では「よっパン祭り」といって、5店舗のパン屋さんが並んでいた。どのお店も個性があって迷っていると、これまた取材をお願いしていた古橋範朗さんにばったり。「こういうお祭だと、自分がお店出すほうになりたくなっちゃいますねえ。」よっちゃん祭の実行委員を務めながらも、数カ月前までは東京のカフェの店員をしていた古橋さんはうずうずした様子で話す。

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漁港まで歩いていき、漁師の息子らしき若者が焼いているイカの炭火焼に惹かれていると、またしても取材をお願いしていた田中立樹さん、知絵さん家族にばったり。先月生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこして、家族5人でお祭をまわっていた。「それじゃまた明日ー!」唯一出発前に取材時間を決めていた約束を確認してから、別れを告げる。イカのあまりの美味しさに感動したあとは、再びよっパン祭りの境内に戻ると、4人目の取材をお願いしていた都郷なびさんにばったり。

つまりは、お祭で今回の旅で訪ねる予定の4組の友人たちには会えてしまった。なんで人はこう「ばったり」会うと嬉しい気持ちがするんだろう。

お祭がなくても、津屋崎の街を歩いていると「ばったり」人に会う。津屋崎を訪ねるようになったはじめの頃は、まちを案内してくれていた都郷さんが「ばったり」と、漁師のおじちゃんに会ったり、農家のお母さんに会っておしゃべりをする姿を見て、その会話がちょっとふざけていて、それでいてあたたかくて、いいなあなんて思っていた。

何度も訪れるうちに、今度は自分一人でいても「ばったり」を経験することに。息子を乗せて自転車に乗ってパン屋さんで買い物をしていると、田中さん家族にばったり。そのまま浜辺でお昼ごはんを一緒に食べた。

そして今回。お祭があったということもあるけれど、会いたい友人たちには「ばったり」と会えた。
そこから、私の心の中で何かのスイッチが再生され始めた。

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この特集は、3泊4日の旅を通して、津屋崎で暮らす友人たちの言葉を借りながら、「優しく生きる」ということを考えていきます。

第1回「優しさの連鎖反応」田中さん家族
第2回「存在を肯定するコミュニティ」木村航さん
第3回「心を開くということ」都郷なびさん
第4回「ここで生きようと決めた軸」古橋範朗さん
エピローグ「旅の終わり」

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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