かけ算の生き方

特集|かけ算の生き方 Vol.1「緩やかに地続きとなる仕事」建築家・岩間航

建築家、カフェのオーナー、プロダクトデザイン、レジデンシャルホテル経営。どの職業も、社会の中では分業化して存在している職業だ。岩間航さんは、一見バラバラで繋がりのないような職業を掛けあわせた働き方をしている。
岩間さんの働き方をみていると、いろんな仕事は地続きなのかもしれないと思えてくる。一つの職業として孤立しているものは、何一つなくて、それは勝手に一つの職業としての輪郭を決めつけているだけなのでは、と。

IMG_9453

Face&Works

岩間さんは個人設計事務所をもつ建築家だ。手がける内容は、個人の住宅もあれば、カフェやレストランの設計、内装、リフォームなど幅広い。

041
©Photo Makoto Ozaki

間接照明や、外の光の入り具合、木のぬくもりや、靴を脱げるスペース。 岩間さんがデザインした空間で感じることは、まずホッと落ち着くということ。でもそれだけではなく、どこかワクワクする気持ちがある。見たことのない扉や窓の形、複雑な机と椅子の配置、リビングにも個室にも変身する空間。驚きと面白さも、詰め込まれた空間だ。

id
©Photo Makoto Ozaki

岩間さんは、建築家の顔だけでなく、カフェのオーナーという一面ももつ。「設計事務所+(足す)カフェ」という意味からつけられた「+カフェ」は、事務所とカフェが緩やかにつながっている空間で、コーヒーを飲みながら本を片手に静かに過ごすお客さんに愛されている。

31
©Photo Makoto Ozaki

また「+カフェ」の上階には自身で内装のデザインを手がけた、レジデンシャルホテル「+床(とこ)」も経営している。海外から長期滞在するお客さんもいれば、西荻窪で働く人たちの打ち合わせやイベントの場所としても利用されている。そしてその空間に飾られている、小さな家の形をした紙で作られたコンセントカバーもまた、岩間さんの作品だ。壁には、建築端材を使ったコート掛けがあったり、建築家ならではの視点でプロダクトデザインを手がけている。

History

岩間さんの建築との出会いは、お祖父さんが建築家ということもあり、小学生の頃から職業としての「建築家」が身近な存在だった。「祖父がやっていたからやりたいという意識はありませんでした。ただ理系も好きだし、図画工作も小さい頃から好きだったし、自分が向いてるかどうかわからないけど、あてはまるかな、と思って建築学科に進みました。」

大学時代を振り返ると「建築に対してあまりピンときていなくて、学生生活を楽しんで過ごす日々でした。」と話す岩間さん。卒業後の進路は、中学生時代に父親の都合でアメリカで暮らしていた経験もあることから、就職ではなく留学したいという気持ちがあった。唯一ヨーロッパの中で、埋立地を作ることで国土を広げているオランダは、若い建築家が集まり、チャレンジしやすい国ということから、当時はオランダ建築ブームの波が広まっていた。そのブームの影響もあり、岩間さんはオランダの大学院に進学を決め、2年間の建築漬けの生活を送った。

帰国後は、就職する気持ちは全くないまま、たまたま遊びにいった大学時代の先輩の設計事務所で、一つの物件を頼まれることに。事務所に片足を突っ込んで働きつつ、もう片方では祖父が建てた実家のリフォームを手がけていた。

実家のリフォームが終わると、オープンハウスでパーティを開いた。リフォームをする度に開くパーティには、友人だけでなく、知らない人も集まってきた。多い時は60人ほど。不特定多数の人に、自分がデザインした空間を見てもらうことができ、宣伝になることを実感した。「パーティをきっかけに、不特定多数の人が来てくれる場所があったほうが絶対いいと感じ、カフェをやろうと思いました。」ショールームは硬いイメージだし、シェアオフィスだと不特定多数の人がこない。けれどもカフェならいろんな人がやってくる。そこに可能性を感じたのだ。

自宅を仕事場にしていたため、オフィスとしての場所も探していた。そんな中パーティで出会った、近所に住む建築家の友人と意気投合し、共同オフィス兼カフェを開くことに決める。お客さんは一日数人で売上は立つ、接客は営業としても、自分の息抜きとしても捉えられる、内装は自分たちで考えられる。そんな風に肩に力を入れることもなく、ひっそりとスタートしたカフェだった。

駅近とはいえ、ビルの3階。しかも看板は小さく、入り口はわかりにくい。はじめた当初は、一人もお客さんが来ない日もあった。しかしそんな中やってくる人というのは、面白い人が多かったという。お店でお客さんと話していると、段々とリピーターが増え、雑誌にも掲載されるようになると段々とお店は軌道にのってきた。週末には、貸しスペースとして別のオーナーのお店となる。4月からはカフェならではの物販も始める予定だ。「+カフェ」のその意味は、だんだんと人やイベントなどが集まって足されていく、そんな意味に今は変わりつつある。

Philosophy

岩間さんの手がけるものづくりの根底には、オランダの大学院時代から続いているテーマである「クラスターダイナミクス」という理論があることを教えてくれた。「ものすごく簡単に言うと、『もの』と『もの』とのお友達理論です。」

IMG_9432

岩間さんのデザインした空間をみると、一つの「もの」からその「お友達」、つまりは共通する要素をどんどんみつけていく楽しさがある。例えば、テーブルに長方形のコースターをみつける。ふと天井を見上げると、同じく長方形がたくさん集まった照明器具をみつける。今度はコースターの素材が古材であることをみつける。座っている椅子も同じような素材であることに気づく。
こんな風に、ある一つのものを通じて、その空間で連続するような関係性をもつものがオーバーラップして存在している空間なのだ。「最初のきっかけみたいなものをデザインしておくと、自由に関係を作り始めるんです。あまりカオスになり過ぎると、その糸口を発見できなくなるので、そのバランスをすごく考えています。」
何かが始まるような、見えてくるような、そんな予感が置かれているようだ。

Future

カフェを一緒に始めたパートナーが、個人の事業に集中するため辞めるということもあり、今後はカフェのイベントや物販、プロダクト制作にも力を入れていこうと思っている。知り合いの木工作家さんの作品をアレンジしたノートは、表紙と中身はリフィルできるため、お客さんが自由にカスタマイズできる。「カフェは滞在時間が長いので、カッターマットやハンコを用意して、コーヒーを飲みながら自分で作ることができる商品を考えています。」

IMG_9510

将来は漠然とだが、海外で仕事をしたいという気持ちがある。そんな夢を形にするきっかけになりそうなのが、レジデンシャルホテル「+床」の存在だ。一部屋だけのホテルは、自然とお客さんと繋がりができる。一度滞在したお客さんが、母国で宣伝してくれたりと、その繋がりはどんどん広がっているようだ。

0018s1
©Photo Makoto Ozaki

建築家、カフェオーナー、プロダクトデザイン、ホテル経営。岩間さんの手がける仕事は、地続きのように緩やかに繋がっている。一つの職業として定められている輪郭が、書き換え可能な線だとしたら。一つの仕事の中には、別の仕事に繋がる何かが含まれていて、それを結びつけるか結びつけないかは、きっとその人次第。それはまるで、岩間さんから教えていただいた「お友達理論」のように、仕事においても、目の前にある仕事から通じる「お友達」を別のところにみつけて、関係性がうまれていくものなのかもしれない。


プロフィール

岩間航(いわま・こう)
1972年生まれ。東京理科大学理工学部小嶋研究室卒。ベルラーヘインスティテュートアムステルダム(BiA)修士卒。 岩間航設計事務所(Co Urbanism & Architecture)主宰、タスオルグ、タスカフェ、+床(タストコ)主宰。
http://www.c-u-a.com/

この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocket
  • Lineで送る

記事への感想を送る

いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

メッセージ

このフィールドは空のままにしてください。