妻に、花束を。

特集|妻に、花束を。第4回「贈り物を、思い出に」

この特集は、ある夫婦を通じて、身近な人への想いを花束という形にして、贈り物をする姿を綴っていく連載記事です。
プロローグ
第1回「登場人物紹介」
第2回「妻らしい花束」
第3回「想いをカタチにする」


撮影の日は花曇りの日曜日だった。
待ち合わせは、小石川植物園の正門前。夫・祐成さん、花屋・つぐみさん、カメラマン・高崎が集まり、いざ撮影ポイントを探しに行こうと入り口に向かったそのときだった。
「申し訳ありません。生花の持ち込みは禁止されています。」まさかの入場規制がかかってしまった。急遽、撮影場所は二人が暮らし始めた十条の街に変更となった。

十条は、夫がはじめて妻へ花束を贈った場所でもある。はじめての花束は魔除けのためのカサブランカだった。当時住んでいた古いアパートの前まで行き、そこでつぐみさんから花束を受け取った。真っ白な包装紙が解かれて、あらわれた花束。

「わー、すごいかっこいい!」

つぐみさんから、花束に表現したものについて説明を聞く夫。
妻の内面にもっている華やかさを表現した根っこは、全く想像もしなかったカタチだった。

「僕が思っていたものをはるかに越えています。」

妻に対して、もともと自分がなんとなく感覚で想っていたものがあり、花束をオーダーするときに伝えるために言葉にしたものがあり、その上に「つぐみ」という花屋を通して全く違う表現が加わった。それは自分で気付いていなかったものが、目に見えるものとなって現れた瞬間だった。

夫は、花束と共に贈ろうと思いついた色紙をもってきていた。そこには、妻が専門学校時代に使用していたパレットから抜き出した、妻の好きな朱鷺色とヴィリジアン。そして夫が同じく専門学校時代から使っている好きな色である鮮やかな赤と青。その色を繋ぎあわせたところに、思い出の青森県立美術館を描いた。周りには、ちょっとふざけたような絵のスタンプが押してある。

「はじめは文章で書こうと思ったんですけど…こんなに通じ合える人が世の中にいるって思わなかったんです。結局なにをするのだって、一人じゃないかって。生きるのも一人、死ぬのも一人。」

でも今は、妻という人間と通じているという実感がある。二人分。そんな気持ちだ。

川沿いの桜並木に撮影ポイントを決め、夫はそこで、花束と色紙をもって待った。
妻が現れると、「よっ!」と照れくさそうに声をかけた。
そして、花束を妻に贈った。

「わーかっこいい!」

妻から出た第一声も夫と同じ「かっこいい」だった。
どんな花束をもらえるか、想像をしたとき、妻はきっと派手な色ものじゃないかと思っていた。けれど受け取ったのは、予想外の色のない花束だった。

「私、色ものよりグリーンが好きだったんです。ラナンキュラス、スカビオサ、すずらんとか私の好きなお花も入っていて、すごいと思いました。」

つぐみさんは、妻・早苗さんにこれまで会ったこともなければ、写真をみたわけでもなく、どんな花が好きかも聞いていない。けれども表現した花束は、偶然にも妻の「好き」が寄せ集められていた。

撮影場所を、川沿いから家の近所の桜並木へ移す。当時のように散歩をしてもらった。
二人は歩いているとき、普段から手をつなぐことはあまりない。ただ一緒にいるだけだ。

「10年後、どんな風に過ごしていたいですか?」

撮影をしながら、カメラマンの高崎が問いかける。

「楽しいと思います。毎日ふざけて笑って」
「そうな。やっぱりふざけながらだね。変わらずだね。」

ふざけるって一番大事かも、と妻は話す。気が抜ける相手じゃないと一緒に過ごせない。だから一緒にふざけて遊べるということが、なによりいいんだと。

「笑顔の絶えない家庭を築いていきます」
結婚式で毎回見かける決まり文句。正直、そんなのきれいごとだと思っていたけれど、いざ「笑顔の絶えない家庭」を目の前にすると、その言葉の意味がわかるような気がした。

一緒にごはんを食べながら笑う。一緒に歩きながら笑う。一緒にお布団に入って笑う。
共に生きることを誓った、一人の人間と、一緒に笑う。それだけでいいんだ。

妻に、花束を。
この瞬間の想いと笑顔を、思い出に。

IMG_9045IMG_9057IMG_9097IMG_9106IMG_9129

IMG_9150


この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocket
  • Lineで送る

記事への感想を送る

いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

メッセージ

このフィールドは空のままにしてください。