妻に、花束を。

特集|妻に、花束を。第3回「想いをカタチにする」

この特集は、ある夫婦を通じて、身近な人への想いを花束という形にして、贈り物をする姿を綴っていく連載記事です。
プロローグ
第1回「登場人物紹介」
第2回「妻らしい花束」


花屋・つぐみさんの頭にすぐ浮かんだものは「根っこ」だった。

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「僕からみるとすごく芯が強くて、ものすごく華やかな人だと思うんです。」

夫が話してくれた妻という人間についての言葉だ。
前面に華やかさがでているわけではないという言葉をヒントに、見えない部分の華やかさ、そして揺るぎない強さという意味を込めて「根っこ」をあえて見せる花束をつくることに決めた。

一番の思い出として語ってくれた青森美術館のシャガール展の話。キーワードは「青森」だった。

「私は青森の光景を、青い木の集まり=青森として捉えました。青という色は植物の世界では存在しないので、つまりはグリーンの集まりです。」

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夫の記憶に残っている色は、ヴィリジアン、朱鷺色、白、水色、明るい黄緑、焦げ茶色だった。
しかし、ヴィリジアンはもともと作られた色なので植物界には存在しない。朱鷺色をローズ・ピンクに置き換えることにも違和感がある。花の色の組み合わせでは、どうにもイメージが狂ってしまう。
そこでつぐみさんが選んだ花の色は、白、その一色だけだった。

「あえて色を使うことをしませんでした。」

青々と樹が生い茂る中に、ポツンと存在する真っ白な美術館。

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「お二人の相性がとても良いということが伝わってきたので、それを枝の2本の流れがとてもきれいなものを組み合わせて、1本の木のように表現しました。」

夫が最後に加えたオーダーはこうだった。
「 話した言葉たちからうまれてきた印象を形にしてほしいなと。僕が言葉にしていないようなものも含めてもらったらそこに意味があるような気がします。」

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シュッと伸びる2本の枝。伸びゆく過程を切り取られた、その枝の曲線は、しなやかさと力強さを備えていて、そこには夫が「言葉にしていないようなもの」を、つぐみさんがカタチにした答えがあった。

最後に「根っこ」にはもうひとつ意味を込めたとつぐみさんは教えてくれた。

「お二人はとても地に足がついている感じがして。いい意味で落ち着いていて、これからも根っこを張って二人でいろんなことを切り開いていってほしい、という想いも込めています。」

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夫婦とは、一本の木を一緒に育てているようなものだとしたら。

風と雨と光は、時には栄養になり、時には身を傷つける。
はじめは細くて小さな木は、強い雨や風に吹かれると、折れたり曲がったりもするだろう。
だんだんと枝がわかれていき、葉っぱが生い茂ってくれば、たくさんの光を浴びることもできる。
月日を重ね、広がっていく年輪を、その内に秘めながら。
土の下には、腐らせることなく根を張って。
気づいて見上げたとき、それは大きな一本の木になっているんだろうか。

まだ結婚3年目の小さな苗木でしかない自分には、わからない。
けれども、私も根っこをはりたい。
そう思いながら、次の日の撮影を待った。


第4話「贈り物を、思い出に」へ続く(3/28更新)

この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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