小さな自分の仕事のはじめ方

ー守りに入るのではなく、自分を試すためのチャレンジとしてはじめたー小さな自分の仕事のはじめ方vol.1「花 植物の手仕事 つぐみ」

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茶色いシミができている花びら。普通ならば表に飾られないような葉っぱの後ろ姿。 少しさびしい冬の景色の中に、そっと現れる、そこはかとない美しさに心惹かれてつけた「花 植物の手仕事 つぐみ」という屋号。その名を表現するかのように、一瞬見過ごしてしまいそうな、けれども静かに存在する小さな美しさを拾い上げ、形にする。ドライフラワーのリースを中心とした制作活動を始めたのは1年前から。小さな一歩を踏み出すきっかけは、OLとして働いていた時代に遡る。

何かがパッと開けて、光が差し込んできたようで。その日のレッスンの帰り道、スキップしちゃうようなワクワクした感じでした。

大学時代は栄養士の資格を取り、卒業後は食品会社に就職。しかし入社式の時点でちょっと違うなという気持ちがでてきた。会社という組織が身体に合わないと感じる日々、常に何かやりたいという気持ちが燻っていた。そんな時、たまたま心奪われるような花屋が近所にオープンする。今まで出会ったことのないような花が並び、その花屋のもつ世界観に惹かれたつぐみさん。あまりにも胸にくるものがあり、前も後ろも考えず個人レッスンの申し込みをお願いした。もちろん花屋に生徒募集の貼り紙なんかはない。当時を振り返り、「今では考えられない行動ですね。花屋の立場になってから、すごいこと言ったな私と思って」と笑う。熱意が通じたのか、その花屋で受け入れてもらえることに。そして、自由を尊重してくれるレッスンを通じて、はじめて「自分を表現する」ということを覚えた。その時の気持ちは今でも心に残っている。「何かがパッと開けて、光が差し込んできたようで。その日のレッスンの帰り道、スキップしちゃうようなワクワクした感じでした。」

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働くペースを落として守りに入るのではなく、自分を試すためのチャレンジ

習い始めて半年が経った頃、OL生活に区切りをつけることを決めていたつぐみさんは、その話を花屋にちらっと話すと、ちょうど欠員があるのでお店で働かないかと誘われる。「 すごく憧れの花屋さんだったので悩みました。最初から何もできないのに入っていいのかって。でも縁だしチャンスなので働くことを決めました。」OLを辞め、憧れの花屋での仕事がスタート。花束をつくることから、ウエディング、活けこみ、ガーデニング、配達、幅広い業務をこなす。時にはコンクリートを砕くような肉体労働もあるし、冬でも店内はクーラーがかかり身体は冷え、朝はとても早く帰りも遅い。その後2店の花屋に就職したが、体調を崩してしまい、結婚もして生活環境が変化した。花屋は続けていきたい。でもふと、一度働き方を見つめ直してみようと思った。「働くペースを落として守りに入るのではなく、自分を試すためのチャレンジということで、個人の活動に重きを置いてみようと思いました。」

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作家でもないしアーティストでもなくて、身の丈アートと呼んでいます。

花屋を辞めると決めたとき、カフェを経営しているお客様から植え込みをやってほしいという依頼を受ける。そのお店は焼き菓子屋さんも開いており、店内で何か展示もしてほしいと頼まれ、つぐみさんはリースを展示販売することに決める。はじめて「個人」としての活動、屋号は「花 植物の手仕事 つぐみ」と名付けた。あえて「手仕事」と呼ぶのは理由がある。「機械じゃない手で出来る仕事で温かみを感じる仕事をやりたいというのが一番にあるんです。だから作家でもないしアーティストでもなくて、身の丈アートと呼んでいます。自分の身の丈にあって身近に感じるアート。」

ダイレクトに自分に返ってくるので一喜一憂しますが、そこにやりがいを感じます。

「つぐみ」としての活動は、鬼子母神手作り市などの青空市でお客様と直接会話をしながら売ることもあれば、フランスで行われる展示会や都内のギャラリーに出展することもある。自分で全てを決められる自由を得たが、自分で動き出さなければ何も始まらない、道を切り開くのは自分。「雇われていてもその中で自分なりに道を切り開いていくこともできるし、新しいことにもチャレンジできると思います。でも、自分がやったことに対して評価を受けたとしても、雇われている場合は多かれ少なかれ会社のおかげ!という部分があると思うんです。個人の場合はダイレクトに自分に返ってくるので一喜一憂しますが、そこにやりがいを感じます。」社会に対して「自分」という小さな存在で向き合うとき、自分の「色」を考え、探し、試しての繰り返しだという。

そんな試行錯誤を積み重ねるつぐみさんの手から生まれてくるものは、見たことのないような形や表現のものが多い。例えば雪で作るかまくらのような形をしたリースだったり、ドライになった葉や実を紐に通したガーランド、自分で簡単に実や花の配置を変えることのできるリースキット。「他にも何かそういうものが出来ないかなって、日々葛藤ですね。」かまくらの形をしたリースのアイディアは、お菓子屋さんに入ったときクグロフ型のお菓子がたまたま目に入り、ヒントをもらった。そんな風に日常で出会う小さなものも大切にしている。

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何年後かに全然違うスタイルになってても面白いと思ってます。もっと変わっていけたらなって。

昔から石とか錆とか、シンプルで渋い感じのものが好きだという。しかし売っていくにあたっては、あまりに「自分」を表現し過ぎてしまうとお客様に引かれてしまう。作りたいものと売れるものとのバランスは難しい。「最近はその時に作れるものが作れていればいいかなと思うので、何年後かに全然違うスタイルになってても面白いと思ってます。もっと変わっていけたらなって。」年齢を重ねていくうちに人はどうしても守りに入りやすい。変化に対して臆病になっていく。けれどもつぐみさんは自分の行先を決めつけることはしない。そして胸の中には、これからやりたいことへの想いが膨らむ。作品の画像を冊子やハガキにしたい、記念日ごとの「贈る気持ち」を形にしたい、季節の花を提案できる移動花屋をやりたい。もっと花や植物を暮らしの中に、身近なものにしたいという気持ちは、花屋で勤めていた時代からずっと持ち続いている。「何より大切なことは、花や植物、人とふれあうこと。直接会話をしながら見ていただける場を大切にしていきたいです。」

自分自身も、作り出すものも、あるがままを大切に生きているつぐみさん。「ぬくもりを感じられる仕事がしたい」という想いを胸に、きっとこれからも誰かの心に陽だまりを作っていくんだろうと思う。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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