ドキュメント“ものをつくるということ”

現代美術家・安田悠「素顔を教えてくれる画家のアトリエ 」

画家のアトリエというと、ドキドキしてしまうのは私だけだろうか。踏み入れていいのかわからない、神聖な領域だから遠慮せねばと思うのと同時に、もの凄く見てみたいという欲求が入り混ざる。現代美術家・安田悠さんは「見てそんなに面白いかなあ?」と笑いながら、撮ってきた写真を見せてくれた。

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言うことをきかない筆で描きたい。失敗からみつけた面白さ。

現在のアトリエは賃貸のため、絵の具で汚れるような壁は自分でベニヤ板と骨組みで作っている。床はフローリングマットが敷かれてある。写真に写っているのは、現在制作中の「完成しようとしてなかろうと人に見せない作品」と決めている作品たちだ。壁には他にも3点掛けられている。「いつも複数同時進行で描いています。数点あったほうが描いていてわからなくなったら筆を止めて、違う絵を描いているうちに、また戻ってみると描き出せたりするんです。」

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これが一つの現代アートです、と言われたら納得してしまいそうな、そんな迫力さえも感じる山積みになった絵の具たち。こここそが、安田さんが描く人の心を包むような色たちの出発点であるパレットだ。「何年分の蓄積だろう(笑)。板にガラスを張ってその上にのっけています。展示後の1〜2週間は描かないのでその間に絵の具が乾いてしまって、また描くときにのせているんです。」色を並べている順番には法則があるわけではないけど、色の場所は感覚的に覚えているという。ということは、パレットをみなくても筆に色をつけて画面までもってくれるということ。まるで職人技のようだ。

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壁には大きな刷毛や習字用の筆のようなものがたくさん掛けられている。「言うことをきかない絵が描きたくて。イメージと違うのり方がして、そのほうが面白いものができるかなと思って。」もともとはキャンバスの下地を塗るとき用に使っていた刷毛。あるとき失敗をして白で消しているときに「あ、面白いかも」と感じ、その頃から作品で刷毛を使うようになった。頭で考えるより、手を動かして生まれてくるものを大事にしている安田さんらしい発想術だ。

クライアントワークに不安感はない。

アトリエには小さい絵を描いたり構想したりするスペースもある。いろんな色のパステルや色鉛筆、インクが所狭しと並んでいる。展示会で発表する作品のほかに、安田さんはいわゆる「クライアントワーク」の制作も手がけている。そのクライアントワークはこのスペースから生まれているのだ。

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クライアントワークで活躍するのは主にインク。発色がきれいでボヤッと滲んだ表現ができる。抽象的な要素を盛り込んで依頼されるときにも活躍する。写真を渡され描く場合は、形はつくりやすくて不安感はないという。 時には「愛についてテーマで描いてほしい」といった依頼もある。家族愛、初恋、情熱的な恋愛、悲恋、友情、を抽象的に描いてほしいという内容だ。まずはそれぞれのテーマを色でわけてしまい、それを元に一般的なイメージを描き出した。クライアントの要望を見事に表現してみせるそのスキルの高さは、今更ながらも「うまい!」と手を叩きたくなってしまう。

10家族愛
家族愛

11初恋
初恋

12情熱的な恋愛
情熱的な恋愛

13悲恋★
悲恋

14友情
友情

普段考えていることは、結構普通です(笑)。

普段考えていることは?と聞くと、笑いながらこう話してくれた。「結構普通の人ですよ。絵のことを考えている比率がほかの人に比べて多いと思うけど、海に行きたいなとか、誰かと遊びたいな、とか普通です(笑)。」絵と向き合いながら、時にはごはんを食べたり寝てしまうこともある。画家という道を決めた人間のみが味わう葛藤と壁にぶつかるときも、この部屋で絵と向き合っている。

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安田さんは会う度に笑顔で「辛いよー!」と言う。「辛い」という言葉にもかかわらず、聞き手が清々しい気持ちになるのはなぜだろう。アトリエを包み隠さず見せてくれたり、自分が抱えている葛藤をそのままの言葉で話してくれる、その等身大の画家の姿に、私たちは共感し応援したくなるのだ。

話を聞く度に、安田悠という人間が好きなる。そんな風に人を惹きつける自分と同い年の画家を、これからも見守っていきたい。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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