インタビュー

魚らしさを追い求める ー魚譜画家・長嶋祐成さんインタビュー

よりそう。連動インタビューの第四弾は、魚譜画家・長嶋祐成さんです。もともと私たちのイベントの参加者として出会った長嶋さん。一度会っただけでも強烈な印象を残し、「魚の譜」の世界に魅了されたスタッフの提案で、iPhoneケースのコラボレーションをさせていただくことになりました。そんな長嶋さんの絵や文章におけるこだわりなどについてお話を伺いました。

小さい頃は虫捕りが好きでした

まずは生い立ちを教えてください。

大阪市の一番端っこの、市内の中では都会じゃないほう出身です。子どもの頃は田んぼがまだあるくらいでした。

海は近かったんですか。

全然近くないです。一番近い海でも車で30〜40分ほど走らないとないくらいで。池も近くにはなかったです。

小さいころはどんなことをしていましたか。

虫捕りが好きでした。小学校低学年頃から父親に毎週山に連れて行ってもらっていて。家の近場の田んぼや空き地で虫捕りやったり。あまり活発ではないほうでしたね。

海に行くようになったのはいつ頃からですか。

父親の会社に釣り好きな人がいて、その方の影響で父と一緒に行ったのが初めてです。小学校5年生だったかな。

初めての釣りは覚えてますか。

福井県の三方五湖といって、湖なんですけど海がつながっていて海水が入ってきているようなところで。そこの湖畔に建っているホテルの裏でハゼが釣れるという話で行きました。結局一匹も釣れなくて。

釣れなかったけど、どんな気持ちだったんですか。

楽しかったです。夜釣りだったんですけど、竿が見えないので、音楽のライブで手に持って振るような、折ると光る小さい棒みたいなのを釣竿の先に付けて。釣れるときにピピっとなるように。そういう雰囲気がすごいよかったですね。後ろ振り返ると自分が泊まっているホテルの光があって、目の前にその緑の光があって。

不登校児がその後、模範生に

どんな中学生、高校生でしたか。

中学生の時、ひょんなことで学校に行かなくなって。一年間くらい熱帯魚漬けみたいな生活でした。一日中熱帯魚を世話していて。最初は登校拒否児の後ろめたさがあるんで、日中外に出るのが嫌だったんですけど、だんだん気にならなくなって、自転車で遠い熱帯魚屋さんに行ったりしてましたね。その頃は家に水槽が3本ありました。 高校に入ると学校が楽しくなって。あんまり面倒みなくなっちゃて、そこまで力入れなくなってしまいました。

高校は生徒会長だったとか。

模範生みたいな感じですかね。もともと性格的に学校という場がむいていて。中学高校はエスカレーター式だったので、不登校児がその後、模範生になったみたいな(笑)。

大学時代について教えてください。

専攻は現代思想でした。大学入った年に、同時多発テロが起きて、世界がどうすればよくなるか、大学の中がいつもその話題でザワザワしているような雰囲気で。まさに現代思想でも、大雑把に言うとイスラム教徒とキリスト教徒がどういう風に共存できるかといった話題が多くて、そういうことを勉強していると世の中のことがわかってきたような気にはなってきましたね。
でも世の中を良くしようと思っているので、一人一人の主張が「こうあるべきだ」という話になるんですね。その一方で別の「こうあるべきだ」っていう意見があって、いつまでたってもつぶしあいというか重ね合いというか。それで全然結論がでなくて。なんかわからなくなってきちゃうんです。自分がこれがいいという主張についてはわかっているけど、それに反論している主張についてはよくわかっていない。だから本当に比べようとすると全部知らなくてはいけない。キリがないし、頭のスペック的に無理だと思い、離れてしまいました。

大学生の頃に魚の接点はありましたか。

なかったです。大学入る前に理系か文系か選ぶタイミングがあって。魚とか生き物が好きで、農学部に行きたかったんですけど、学校の成績的には文系が得意だったんです。結局得意な勉強を選んで、好きなほうは置いておくことに。

自分が一番好きなことに、本気で取り組むことがこわい

大学卒業後の進路はどのように決めたんですか。

大学にいる時、思想の授業の一環で、大衆文化、ファッションについて勉強することがあり、その一時洋服が好きで、面白いなと思って。それで急に服飾の世界にいこうと思ってしまって、卒業後三年間復職の専門学校に行くことに決めました。 けど通っているうちに、服じゃないなあ、と(笑)。だんだん辛くなって、課題とかでるんですけど、つらいなあつらいなあと。ぎりぎり卒業した感じです。そのあと、普通とは違う少し独特な小さなアパレルブランドにアシスタントとして入りました。

なぜそこに決めたんですか。

就職が決まらなくて。絵を描くことが好きで、デザイン画は描くのが好きだったんで、就活で履歴書と一緒にデザイン画提出する時、色をばーって塗っただけのを出したりして、その頃はそれが「とがってていいやろ」って思っていて(笑)。当然どこもひろってくれなくて。卒業間際でも進路がきまっていないとき、そこのブランドの方が僕の作品をみて面白いと言ってくれて。

1年間働いた後は。

ものを作って、それをどう売るかがずっとむずかしいと感じていて。そのブランドは手ぬぐいなんかも作っていてミッドタウンとか伊勢丹に出店したりしてたんですけど。僕も店頭に立ってお客さんとやり取りする機会もあって、自分がいいと思っているものがお客さんに響かなかったりして。そこでどう売るかに興味わいて。

新たな興味が湧いてきたんですね。

そうです。で、次就職する時、いわゆるマーケティングをやっている会社に就職しました。

いろいろ興味が移り変わってきて、その中で魚はずっと常に好きという軸はあったんですか。

生き物はずっと好きで、うすうす勘付いているんですけど、自分が一番好きなことに、本気で取り組むことがやっぱりこわい。勇気がいることじゃないですか。 だって虫が好きで虫で食っていくかっていうと、好きなことを仕事にすると辛くなってしまうかもしれないし、虫のことでお金になるか、とか。そういうのがあって。絵をかいたり、魚が好きだけど、自分はそこに踏み込む勇気がなくて、そこの周りをぐるぐる周っているんだろうなって思ってます

魚の見た目が好き

魚が好きというのは、「描く」「釣る」「食べる」全部が好きなんですか。

全部好き。でもやっぱり見た目が好きです。魚屋さん行くのがすごい楽しい。切り身じゃなくて、死んだ状態で売ってるのが。

氷とかにつかっている魚ですか。

そう、それ最高(笑)。スーパーの魚コーナーはとりあえず見たい。切り身はちょっといいかな、みたいな(笑)。見た目が好きなんです。

眺めているんですか。スーパーで…

そんなじーっと、「あの人怪しい」ってほどではないですけど(笑)。

絵はいつ頃から好きなんですか。

小さい頃から生き物の絵を描くのが好きで。虫とか哺乳類とか。なんでも描くのが好き。魚は5年前くらいに、イラストボードに描くようになって。

描きたいって思ったんですか。

前から一枚の絵として図鑑みたいに描きたいというのがあって、なんのきっかけか忘れたんですけど。

初めて描いた魚は。

サバです。左のはじから、サバ。アジ。みたいな感じ。 ほんとは当時の絵を今日この場で見せたかったんですけど、忘れてしまいました。

どのように描いているんですか。

初めからずっと同じで、鉛筆で下書きしてインクでそれを上書きして、鉛筆の線を消して、水彩で色付けています。

毎晩描くようになったのはいつ頃からですか。

デフォルメされた魚を描いていたんですが、一回飽きちゃったのか、ちょうど転職して忙しくもあり一旦描くことをやめていたんです。そんな中、東日本大震災が起きて、その時家から出れなくなって、会社も休みになって、家でじっとしていることがあって、また魚を描こうと思い、その頃から毎晩ちょっとずつ描いています。

メバルとかカサゴとか、僕からするとすごく魚らしい

どういうものから描き始めたんですか。

(絵を指しながら)これメバルの仲間なんですが、僕すごく好きで。メバルとかカサゴとか、一番バランス的に魚らしい。僕からするとすごく魚らしい。

魚らしい(笑)?形ですか?

形とか、ひれとか。魚のひれっていろいろあるんですけど、硬いすじのひれと柔らかいのがあって。よく食べる魚だとさんまの背中にあるのは柔らかいひれです。タイの背中にあるちょっと爪楊枝みたいに太いのは硬いひれです。このメバルの仲間は前半が硬いひれで、後半が柔らかいひれで。そのへんのバランスも好き(笑)。ちゃんと両方ある。

このあたりの作品はいかがですか。

今年の夏以降の作品です。去年の3月から描いているとはいえ、最初のころは下手で、当時は二ヶ月前の自分の絵をみると、これでうまく描けたと思っていたのか!?という感じなんですが、最近は少し前の絵を見ても下手と思わなくなってきていて、ある程度のびどまりの時期かなと(笑)。良くも悪くも安定している。

毎晩描いているんですよね。

ブログを毎週金曜日の18時に更新するのをノルマにしているので、ほぼ毎晩ですね。描くっていっても今日は下書きだけで終わりとか、描く魚見つけて終わりとかあるんで、毎日ガツンと描いているわけではないです。

何を参考に描いているんですか。

本とウェブを参考にしています。その中で自分が一番その魚らしいと思う、ポーズとか顔つきをしているものを探して、その中からいいとこ取りで、一匹の形にしてます。

どの魚を描くかはどうやって決めているんですか。

今ブログが絵と文章でやっているんですが、文章がネタがつきちゃって(笑)。毎週それがつらくて。文章書けそうなやつという基準になっています。

昔釣ったことがある魚や飼ったことのある魚とか。

僕は、見た目的にも食用魚が好きで、メバルとかアジとか。見るためと思われていない魚の絵と文章を書きたかったんですが、あまりにもネタ切れがはげしくて熱帯魚に手を出してしまいました(笑)

その魚らしい姿形、身の反り、ひれを描きたい

文章は毎回おもしろくて、ネタ切れ感も感じられないほど(笑)、読み物として読み応えがあると思うのですが、文章においてこだわりはありますか。

文章は定型文になっちゃわないようにっていうのはこだわっていて。たぶん表現って全部そうだと思うんですけど、気を抜くとさらっとありきたりな表現になっちゃうというか。

例えば自分が小さい頃海水浴に行って、その情景を書きたいってなった時に、すごい晴れた海を頭に思い浮かべて、さらっと書くと、「陽の光がさんさんと降り注ぐ砂浜」みたいに書けちゃう。でもそれってあんまり伝わらない。一回自分の頭の中で書きたい情景を思い浮かべて、その情景の中でどこが自分の書きたいポイントなのか、そのポイントをきちんと伝えないと、相手にも自分と同じ情景を思い浮かべてもらえないなと。その点を気にするにしています。できているかどうかは別にして。

記憶の中で印象に残っていることは、ひょっとして砂がキラキラしてたところかもしれないし、向こうの屋台が陽炎みたいに暑くてゆらゆらしていたところかもしれないし、波がサーっときてひいたあと水がちょっと浮いているのがスッと沈むところかもしれないし、自分が本当に何が印象に残っていたかということをちょっと考え直すようにしたいと思っています

それは伝わってますね。ありきたりな言葉じゃなく、長嶋さんの言葉だなと伝わってくる文章ですよね。絵でこだわっている点はありますか。

絵でも同じような感じで。例えば、図鑑の絵って本当は特徴を一番伝えるものだけど、逆に要素をそぎ落としているというか。標準語みたいに、本当はどこにもいない魚になってるんですよね。本物の魚はこんなにまっすぐにぴたっとしていないし、のびていないし、筋肉のつき方によってひれの広げ方がかわるし。

だからその魚らしい姿形、身の反り、ひれを描きたいんです。メバルは釣られると尾びれをピッとあげたりとか。本当にメバルらしいと思っているのはどういうところなのか。そういうのを含めて、その魚らしい表情を描きたいです。

だからいきいきとしているですね。

今日は20年くらい愛用している熱帯魚図鑑も持ってきてくださいましたね。

不用意に開くと真ん中でばっくり割れます(笑)。

文章が長嶋さんの文章に少し似てましたね。

久しぶりにちゃんと読んでみてると、これパクったなってくらいに(笑)。ほんとに似ていて。パクっているっていうのがちょっと残念なのと同時に、よくは見ていたんですが文章はそこまで一生懸命読んでいた記憶はなくて、頭に残っているというか染み付いているのが嬉しいというか、嬉しいの2割、やばい8割(笑)そんな感じです。

小さい頃から生き物が好きというのがこの年になっても中に残っていて、表現になって映しだされているんでしょうね。

「いい」って言ってくれる人の言葉を信じるようになった

ブログで発信するようになって、自分以外の人に絵を見せるようになって変わったことはありますか。

Facebookでいいねって押してもらえるのは嬉しい。でも僕、基本的に自分が興味あるものがほかのひとも興味があると思ってはいけない、というのがあって。子どものころ、自分が描いた虫の絵とかを、人に「見て見て」ってしゅっちゅう言っていて。ある時たまたま機嫌が悪かったある大人に、「自分が興味あるものがみんな興味があると思ったらあかんで」って言われて。けっこうきつい一言(笑)。

正しいけど(笑)。

僕は傷ついたというより、「そうなんや、そりゃそうやな」と。他の人も好きやと思ってはあかんなと。だから人に見てもらうっていうのは、本当にみたい?みせて何になるの?というのがあって。

だから展示会とかは興味がないんですか。

個展やってみたらって言ってもらったりするんですけど、売るわけではなく、絵を使って何か提案があるわけでもないので。でも気持ちとして変わりましたね。

どんな風に変わりましたか。

若干前向きになりました。子どものころのトラウマが、払拭された(笑)。いいと言ってくださる方の言葉をちょっと信じるようになった。前は見せられたらそりゃいいって言わざるを得ないだろうなって、ネガティブだったんですけど。最近はいいって言ってくださるのなら良い所はあるんだろうなと。

今後やってみたいことはありますか。

そこがもやもやしたまんま、ずっとやっているんで。やっぱり画家ではないので。自分の好きなことに踏み込んでいないというところもあるし、絵の勉強をちゃんとしたわけでもないし、好きで描いているだけなので、絵を売ってどうこうっていうのは全然思ってなくて。自分の絵自体を目的にするのではなく、絵を使ってどうこうするとか、ほんと青臭いですけど、世の中にちょっと役に立つようなものになれたらいいなとは思っています。

iPhoneケースも手にとった方に何か感じてもらえるといいですね。

形になったことは僕にとっては大きな一歩です。

これからも楽しみですね。今日はどうもありがとうございました。

Interview: Mai Oura (non-standard world, Inc.)
Photo:Shota Sato (non-standard world, Inc.)


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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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