よりそうつきひ

家族に「おやすみ」と「おかえり」を言えない辛さを知っているから、言葉で明かりを灯したい。ー私たちが本づくりに挑戦する理由(後編)

作家・小谷ふみさんと店長大浦の出会いから本づくりのクラウドファンディングを立ち上げることを決めるまでの道のりについて(前編)はこちらからご覧ください。

「私のために」から「誰かのために」へ

人から応援を仰ぐことを苦手とする作家・小谷ふみさんと共に挑むことになった本づくりのクラウドファンディング「言葉の基金」。企画内容を詰めていく作業で、いっとき足が止まってしまいました。

それは、小谷さんを知る人から応援メッセージを集めてはどうか、という提案を投げた時のこと。「やがて森になる」を世に出してから、小谷さんが実感してきた書店と作家の関係性を考えると、どうも気持ちが進まないとのこと。せめてアンケートという形ではどうか、と小谷さん。

私たちが気になったのは、「私のために」とお願いすることに恐縮して心苦しんでいる小谷さんの姿でした。それならば、「私のために」の定義を「誰かのために」「社会のために」ともっと広げてみてはどうだろう。

そこで、収益の一部を小谷さんが気になる団体に寄付をするという新しいアイディアを持ちかけました。

言葉だけでなく、他の何かをきちんと巡らせるべき

小谷さんからは届いたのはこんなお返事でした。

私はずっと二宮尊徳の「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉が頭を回っていて、寄付は、経済とはちょっとズレてしまいますが「言葉の基金」という言うからには、言葉だけでなく、他の何かをきちんと巡らせるべきであるという気持ちがずっとありました。

選んだ団体はドナルド・マクドナルド・ハウス。なぜこの団体を選んだのか、その理由はクラウドファンディングの小谷さんからのメッセージにもあるとおり、ご自身の入院時に深く感じた想いがあります。

33歳の時に大きな病気を患った小谷さんは、これまで3回の入退院を繰り返しています。何ヶ月にも及ぶ入院で、身体以外で一番辛かったのは、家族と面会で会うことができても「おやすみ」と「おかえり」を言えなかったことだといいます。そして、子供の寝顔を見れなかったことも。

親子が何ヶ月も離れ離れであることの辛さを知っているからこそ

いつしか子育ての相談を小谷さんにした時のこと、こんな言葉をかけてもらったことがありました。

「子どもには『おかえり』って笑顔で言えればそれだけで大丈夫だと私は思いますよ」。

それを機に、私は子どもと喧嘩する日があったとしても、玄関が開く音が聞こえたら潔くPCから離れ、笑って子どもたちを迎えることを心がけるようなりました。そしてその言葉の裏側を今回の寄付への想いを聞いて知ったのです。

私は医者でも看護婦でもないから、子どもたちの病気を治すことはできないけれど、この暗闇に寄りそうことができるかもしれない唯一の方法、それはやはり「書くこと」しかないと、「書くこと」は、闇に浮かぶ希望となりました。

親子が何ヶ月も離れ離れであることの辛さを知っている小谷さんだからこそ選んだ、ドナルド・マクドナルド・ハウス。それは、私たちが投げかけた「寄付」というアイディアを受け取った小谷さんが真っ先に思い浮かんだ、心に深く繋がりのある団体だったのです。

子育ての時期は、ずっと続くように思えるけれど、子どもが親を本当に必要とする時間はとても短く、親子が親子らしく居られる時は、あっという間。
病によって、親子が引き裂かれる時間が、どうか、少しでも短くなりますように。

自己表現でも自己満足でもなく、
現実的に、役に立つものを捧げたい

そして、「書くこと」について小谷さんはこう語ってくれました。

小谷ふみは「わたくしごと」を書いていますが、それを「自己表現」だと思ったことはなく、言葉に鏡をしのばせて、「あなたごと」でありたいという想いで書いています。

そして、「言葉の基金」と掲げるからには、自己表現でも自己満足でなく、また、耳ざわりがいいだけの、綺麗ごとでもない、言葉を、それから、現実的に、役に立つものを捧げたい。

もの書きとしての収入は、微々たるものですが、「お腹すいていてても、パンは半分こ」の気持ち、小さな明かりも半分に分けることで、灯りは倍になります。

 そうやって、小さな明かりが、一つ、また一つと増えて、ゆけばいいなと思います。

「本は思いやりで出来ている」。あの言葉の根っこにあるのは、自分のことではなく、誰かを想う心。利他的と言ってしまうと聞こえが良いかもしれませんが、やはり人の役に立ってはじめて、社会にとって存在意義が生まれると思うのです。

そしてその想いをきれいごとで終わらせることなく、きちんと必要としている人の元へ届けること、継続させていくためにお金を巡らせること、つまりはビジネスとして成り立たせることも私たちは目指しています。小谷さんはそれを「氷のような情熱」と表現されているのですが、理想と現実のバランスを取ることは、本に思いやりを込めるために大切なことだと感じています。

私たちと共に、社会を少しだけ優しい方へ動かしませんか?

今回のクラウドファンディング「言葉の基金」はやはり私たちの夢の実現へ向けた「応援よろしくお願いします」ではない。投げかけるのは、きっとこんな言葉。

私たちと共に、社会を少しだけ優しい方へ動かしませんか?あなたも、私も、あの子も優しく暮らせるように。

私たちの活動ができることは、ほんの微々たる力。きっと風にすぐ吹き消されてしまいそうなほどの小さな小さな灯。

けれども、その小さな灯が集まれば、きっと眩しいほどの光になれるはず。一本のろうそくの灯を何本も、何百本も、何万本もわけていくと、宇宙から見つけられるほどの明りになれるから。

クラウドファンディングの締め切りまで、約1か月。共に歩んでくれる方をお待ちしています。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

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