よりそうつきひ

読むとホッとする「やさしい」本で、自分をまるごと受けとめるひとときを。

本は自分のためだけでなく、贈り物にもできると思うから。

こんにちは、スタッフの小栗です。

前回に引き続き、作家・小谷ふみさんと店長大浦が、誰かにおすそわけしたい本を選び、ご紹介するこの企画。

小谷さんが著書『やがて森になる』を出版する時に、大切な人からいただいた言葉「つよい・やさしい・おかしい」をお借りして、今日は「やさしい」をテーマに、二人が選んだ本と一節をお届けします。

 

▶︎小谷さんがおすそわけしたい「やさしい」本

『せんはうたう』(ゆめある舎 2013年)
詩 谷川俊太郎  絵 望月通陽

おすそわけしたい一節:

(「せんはとぎれない せかいがとぎれないから」より)
せんはどこへでもいける
じぶんがみちだから

せんはじゆう
せんはなににでもなれる

「せんはうたう」

ねえ かみさま
はじめてのうたは
あなたがつくったの?

みんなって
ほんとはいつも
ひとりひとり

いきものを だくと
いのちに だかれる

うたのあかちゃん
ピアノのなかで
すやすやおひるね

そっくりの ははと むすめ
ちがいは 二オクターブ?

あいするって
とけあっちゃうこと
かな?

アンダンテのけいとで
なにを あもうか

しあわせって こまる
なきたくなっちゃうから

おと
ほんのすこしでいいから
わけてくれる?

せんも うたっているよ
えのなかで

せんは
どこかへさってゆく
わたしをのこして

なかがいいと
ときどき こころが
からまっちゃうね

よろこびと かなしみは ふたご
かおはにてないけど

わすれてもいい
たましいは
わすれたということを
おぼえているから

ゆめでひく ピアノは
ほしぞらを ばんそうしている

ピアノのなかで
うたは まってる
つきとデートするよるを

うたに ひっぱられて こわいけど
ほしに あいにいきます

いきものの うたは
とてもしずか
みみをすまさないと
きこえない

こころのこばこに かくしたうた
あなたと うたいたい

こいぬ こねこ
こども ことり
かわいいいのちに
りずむが ひそむ

たのみもしないのに
ことりは うたをおしえに
きてくれる

ぼんやりしていると
みえてくるけしきがある
きこえてくるおとがある

すきになると
ふたりのむねに
ことりが すむ

おんがくも おと
なきごえも おと
ちきゅうは おとのほし

小谷:
「せん(線)が主人公の本で、せんとせんがおりなす世界が詩で描かれています。“なかがいいと ときどき こころが からまっちゃうね”というフレーズに、その通りだなと。

最近、夫や息子の悩みを聞くことが多いのですが、彼らの人間関係を見ていても、私と家族の関係においても、こんがらがってしまうのは、相手に思い入れがあるからでした。

特に思い入れが無ければ、そんなに絡まったりしないけれど、せんの長さがあればあるほど、その人との歴史が長かったり、気持ちがあればあるほど、絡まってしまうもの。

『どうして分かってくれないの?』という気持ちも、長すぎる感情を持て余してるがゆえなのかもしれません。」

喜びと悲しみのサイズは同じ

小谷:
「私が常々思っていて共感したフレーズが、“
よろこびと かなしみは ふたご かおはにてないけど”。

子供の時は悲しみも喜びもシンプルだったから、ずっしり重い感情は数えるくらいしかなかったけれど、大人になると喜びや幸せ、嬉しさを感じたことがある分だけ、失ったり悲しいものの大きさも同じように膨らんでいくように感じます。

すごい悲しみを知っている人は同時にすごい喜びを知っていて、逆も然りで、自分の持っている喜びと悲しみのサイズは同じ、双子なのかもしれません。

そういう、自分の絡まってしまう感情とか、喜びと同じくらい大きい悲しみとかを、『よしよし。そういうものだよね。みんなそうだよ』と言ってもらえているみたいで、『やさしい』本に選びました。

最後の、“おんがくも おと なきごえも おと ちきゅうは おとのほし”も、あぁ音を立てていいんだな、泣いてもいいんだなって、ホッとする感じがとても好きです。

 

▶︎大浦がおすそわけしたい「やさしい」本

『はるかな国からやってきた』(童話屋)
谷川俊太郎

おすそわけしたい一節:

(「地球へのピクニック」より)

ここで一緒になわとびをしよう ここで
ここで一緒におにぎりを食べよう
ここでおまえを愛そう
おまえの眼は空の青をうつし
おまえの背中はよもぎの緑に染まるだろう
ここで一緒に星座の名前を覚えよう

ここにいてすべての遠いものを夢見よう
ここで潮干狩りをしよう
あけがたの空の海から
小さなひとでをとって来よう
朝御飯はそれを捨て
夜をひくにまかせよう

ここでただいまを云い続けよう
おまえがお帰りなさいをくり返す間
ここへ何度でも帰って来よう
ここで熱いお茶を飲もう
ここで一緒に座ってしばらくの間
涼しい風に吹かれよう

大浦:
「谷川さんの中で1つ選ぶのは至難の技ですごく迷ったんですけど、やっぱり1番好きって心の中で思えたものを、『おすそわけしたい一節』として選びました。

“ここで一緒に座ってしばらくの間、涼しい風に吹かれよう”に、思わず『そうだよね!それだよね!』と言ってしまうほど共感して。

今年の夏は冷房をかけて過ごしていたのですが、ある日の夜、お風呂上りに子供と喋りながら窓をあけたら、すっごく気持ち良い風が部屋に入ってきて、『なんて幸せなんだ!!』とやさしい気持ちになったんです。」

些細なことがやさしい気持ちに繋がる

大浦:
「上記でご紹介した『おすそわけしたい一節』
を読んだとき、最初のパラグラフは子供に対する愛、真ん中は恋人への愛、最後はパートナーへの愛について描かれていると感じました。

縄跳びをしようとか、おにぎりを食べようとか、何でもないこと、たわいもないことが、すごく愛しいことだと思えて。

でも実はこの感覚、小谷さんの作品を読んで感じることと、とても似ているんです。すっごく些細なことが、なんて大切で、なんて愛おしくって、自分の大切な人を想いたくなる優しい気持ちが動き始めるのが、この『地球へのピクニック』と小谷さんの作品の共通点だと思います。

高価なアクセサリーをあげるというような、サプライズプレゼントではなく、こういう些細なことが優しい気持ちに繋がる。それが伝わってくる作品だったので、『やさしい』本に選びました。

二人の対談を聞いて、私が感じたこと

二人の「やさしい」は、いかがだったでしょうか。みなさまのイメージと似ていましたか?違いましたか?

私はこの対談を聞いて、嬉しい感情と同じくらい、悲しい感情も、「うんうん、そうだよね」と受け入れてくれる存在は、とても貴重だなと思いました。

どうしても悲しさや怒りなど負の感情に対しては、「そんなこと思っちゃダメ」と蓋をしてしまいがちです。自分に対しても、大切な人に対しても。

でも無理に押し込めようとすると、むしろ心の底でどんどん大きくなってしまうもので、だからこそ、「やさしい」本があれば、どんな感情も受け止めてもらえる場になると思うのです。

そうだよね、悲しかったよね、よしよし、いいんだよ。そう言葉で言うのは恥ずかしいけれど、代わりに「やさしい」本を自分に、大切な人に。「大丈夫」という気持ちを込めて。

偶然にも同じ…

実はこの対談、当日まで互いに選ぶ本の内容を秘密にしていたのですが、二人が「やさしい」をテーマに選んだ本は、偶然にも同じ作者でした。

対談中、大浦が先に発表しようと「選んだのは、谷川俊太郎さんです。」と言った瞬間、小谷さんから悲鳴にも似た驚きの叫びが。「え~うそー!私もなんだけど~!」。

「すごいすごーい!え~!」「これ、事前に何を選んだか言わなくて良かったですねー!」。同じ作者に「やさしい」を見出す予想外の出来事に、興奮する二人なのでした。

明日は「おかしい」をテーマに、小谷さんと大浦がおすそわけしたい本をご紹介します。二人が選んだ「おかしい」本には、ただ可笑しい・面白いだけではなく、切なく温かいメッセージが込められていました。

つづく

<Information>

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館内放送

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この記事を書いた人:

よりそう。のスタッフ。お店のSNSを担当。 数年ごとに住みかを変える転勤族。いつか森の湖畔にある、小さな家に住むのが夢。InstagramやPinterestで、素敵な画像を集めるのが趣味。
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いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

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