food letters

【food letters|春・福岡編】最終話 人が人を想う心は見えないけれど、本当はこの世界に溢れている。

料理家cayocoさんの食を人をつなぐ旅「food letters」春・福岡編、前回までの話はこちら

「優しい真面目さが見えました」

旅でお世話になった方たちを招く夕食会。今夜のメニューは、ブロッコリーのイカめし、鶏とカリフラワーの塩煮、新玉と干し柿と菜の花のオムレツ、つぼみ菜と里芋のフリッター、大根ポタージュ、苺の葛プリン。

夕食会にやってきたのは、二人の花田さん。ブロッコリーをわけてくださった智昭さんと、里芋をわけてくださった祐輔さんです。

ごはんを囲みながら、お二人から畑の話を興味深く聞いていたcayocoさん。暮らしのリズム、野菜の育て方、土の話等々。

「お二人はタイプは違うけれど、のんびりしていて穏やか。一緒にて心地良いです。義務感で動くのではなく、楽しんで畑をしている雰囲気が伝わってきて、優しい真面目さが見えました。」

夕食会を振り返るcayocoさんは、そう話してくれました。

ごはんを誰かとつくること、誰かと食べること

「普段食べないようなごはんで、美味しゅうございました。」

お皿からごちそうたちの姿がすっかりなくなり、そう言葉を残したお客さまをみんなで玄関まで見送ります。

ふとcayocoさんの顔を見ると、頬がほんのりピンク色に。夕食づくりの準備を始めた時の顔色とは大きく違って、湯気がふわりと出そうなほどに生き生きとしているのです。

ごはんを誰かとつくる、誰かと食べる。
笑いながら、おしゃべりをしながら、心を動かしながら。

それはきっと大きなエネルギーの循環の中に身を置くこと。エネルギーを渡しながら、もらいながら、どんどん膨らんでいく大きなうねりのようなものが、この夜、この場所に確かにあったのだと、紅くなった頬が教えてくれました。

「思いを食べる、のかもしれませんね。」

翌朝、熊本へ発つ前に今回ご協力いただいた角さんと木村さんと共に、この旅について振り返ります。

「これまで謎だった。」

地元の野菜の宅配事業も営む角さんがそう話すのは、夕食会のおむすびの一件で紐解けたこんな話しでした。

「僕は野菜は特別なものを届けている感覚がなくて、それでもいろんな人が『おいしい』って言ってくれて、なんでかってずっと思ってたんです。新鮮さは産直コーナーとかわりはしない。なのに野菜の味が違うって謎だった。

でも昨日、「ありがとう」と言いながら握ったおむすびと「ばかばか」って言いながら握ったおむすびの違いの話を聞いて、僕らからいろいろな話しや考えを伝えて野菜便を届けているからおいしく感じてくれるのかなあと思ったんです。」

その話しを静かに聞いていた浅田さんは、こんな言葉を返しました。「思いを食べる、のかもしれませんね。ここまで届けてきてくれてありがとう、という気持ちであったり、角さんがあんな風に言ってたなあと考えながら食べたり。」

するとcayocoさんもこう口を開きました。

「お店でごはんを出すときも、野菜をつくっている人の話を説明したりするんですが、情報を食べるって大事だなって思いました。どんな思いがあって、どんな人がつくっているのかを伝えるって大事だなって。」

人が人を想う心は見えないけれど

私たちは普段、何を食べているのでしょう。決して、目の前のお皿にのっているものだけを食べているわけではない。見えない、空気も思いも心も食べているのかもしれません。

旅を終えたcayocoさんは、こんな言葉をSNSで書き記しています。

「みんなそれぞれ、スタイルは違うけれど、自分以外の誰かも幸せになってほしいと思って暮らしていて、その人たちの姿を見れたことに心がほかほか温かくなりました。料理を作ることはもちろん、きっとこの感覚に出会うために旅したんだなあ。」

誰かの幸せを思いながら。

人が人を想う心は見えないけれど、本当はこの世界に溢れている。心のレンズをキュッとピントを合わすように絞ってみたら、きっと見えてくる。

想い想われながら、今日も生きていることを、時に忘れながら、時に思い出して。そして目の前のごはんに私たちは今日もこういうのです。

「いただきます。」

写真:浅田剛司

<春の旅・完>

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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