出会いの中に隠れているもの

ダンス?ダンス?ダンス!

この連載は、ドイツを拠点として活動するダンサー振付家、神谷理仁さんのエッセイです。
ダンサーが踊るように描く、出会いに纏わるお話をお届けします。前回はこちら

サウンドオブ恋

高校生の頃、好きになった女の子はダンサーで夢みたいに可愛い女の子だった。学校の廊下ですれ違いざまパチリ、目が合うと、スーパーカーのスピードで心臓は加速。バク!バク!バク!恋する心に聴診器をあてると、聴こえてくるあの音。

恋+踊り=

その子は踊りに夢中の女の子。文化祭で創作ダンスを踊ると聞いて、僕は一人で見に行った。背筋を伸ばし、とても真剣に。踊る彼女の姿を見つめれば切なく、透明で美しい感覚に包まれた。半分は恋のチカラ、半分は踊りのチカラ、合い混ざると魔法が生まれる。

なぜ踊るの?

ダンスを見ていると心深くでド〜ンド〜ンと鐘が鳴って、感動は広がり、疑問が残った。人間ってなぜ踊るの?ステップを踏み出す瞬間、何を感じ、何を頼りにして動くの?素朴なことをいろいろ想い、心は不思議がったが、いくら想い巡らせど答え見えず、東京の四季は四拍子を刻み、背景の色は切り替わった。

6年後、踊りだしそうもない日常から

6年の月と日が経ち、恋の魔法もとっくに解け、僕は大学を卒業し、アルバイトをしながら友人たちと自主映画を撮っていた。頭上に太陽は輝いたが、監督の僕は体たらくで、製作は何かとドン図まり、かなり落ち込んでいた。落ち込むと僕は、クリスチャンなので祈る。当時暮らしていた東京のアパートの布団に身を投げ、目を閉じて僕は祈った。その時の気分は、まぁ、どうにでもなれ。

チャランポランな観察者

 横になって脱力して祈っていると、右の手のひらが自分の意思とは関係なくポーン、ポーンと跳ね出した。不思議だなぁと思いつつ、右手のひらをほっぽらかしていた。チャランポランな観察者になって、ポーン、ポーンと跳ねる手のひらを、目をつむり暫く感じていた。すると突然、誰かが僕の体を引き上げるような強い力がはしり、僕は素早く立ち上がった。

踊りの誕生

その場に立ち、今までに自分でも動いたことのないような動き方で僕のからだは動いていた。ゾッとする。さすがに驚き、とうとう頭がおかしくなっちゃったな、と思った。しかし意外にも脳はまだ冷静に働いていて、自分から溢れ出るこの動きはいったい何であろう?そう問いながら、考えていた。暫くして、ふっと心によぎった答えが、これは踊りではないか?以前いくら考えてもわからなかったあの踊り。何故だかこの時、これこそが踊りの始まりだな、そう僕は勝手に思った。

生まれたばかりの懐かしいふるさと

恐れと親しさ、喜びと痛み、真剣と冗談、などなど、普段なら相反する感情や気持ちを踊りは自然に受け入れ、ざまざまな形や動きに変えていた。景色ががらりと変わって見えたような、大きな喜びが僕を包んだ。僕にとっては本当にビックリな新体験であったが、踊りにしてみれば故郷でのんびりと羽根を伸ばしているようなことであったのかもしれない。それはわからない。わからないけれど、踊りは新しい風を僕に送り、心の重力を変え、体を見る目を一変させた。日に日に僕は踊ることが好きになった。

つづく

この記事を書いた人:

振付家&ダンサー。東京都生まれ。フォルクヴァング芸術大学卒業。踊りを通して知らない場所や人と出会うこと、予定調和ではない驚きや想像性と出会える空間をつくることをテーマに活動している。

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