となりあう日々

見たことのない過去が懐かしくなる時がある。「クレヨンの記憶」

クレヨンの記憶

実家の屋根裏は、タイムマシンのよう。

息子が幼いころに使っていたクレヨンセットと、
なぜか夫が小学生のころに使っていた、
「くれよん30色」が出てきた。

夫は小さな頃、
インドア派で絵ばかり描いていたらしく、
小学生の時の夢は、絵描きだったそうだ。

今でも描くことが好きで、
ふいにお絵描きスイッチがオンになる。
そんな夫のルーツのようなクレヨンセット。

ボロボロになったケースの蓋を開くと、
これまたボロボロの、長さがさまざまな
クレヨンたちがズラリ姿を現す。

よく見ると、
1本、1本、ひらがなで名前が書いてある。
お義母さんの字だ。

夫は3人兄弟。
年の近い3人を育てるのは、大変な苦労だったと思う。
そんななか、1本、1本に名前を3人分。

夫のルーツと母の想いを感じるクレヨンを、
ケースに書いてある色の名前順に並べてみる。

すると、
幼かった夫の好きな色が、見えてくる。
「あいいろ」そして「くろ」が、特に短い。
夫は、「深い青色」が今も大好きだ。
逆に長い色は「えんじ」「だいだい」。
息子は、赤がすぐになくなったものだった。

今も昔も、色の好みは変わらないらしい。

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「物にも心があるから大切に」と育てられ、育ててきた。
それは、きっと「物にも記憶が宿る」から。

夫と息子のクレヨン、一気に湧いて出てきて60本。
このまま再び、眠らせてしまうのは、
なんだかもったいないような、
でも、このままにしておきたいような。

60本の記憶の跡を消さないように、
少しだけ、描いてみる。

小さかった2つの手のひらが握ったクレヨン。
小さな2人は、
何を見て、何を感じて、何を描いたのだろう。

手に取ると、
クレヨンたちの止まっていた時計が動き出し、
2人の幼かった時だけが、色を取り戻す。

タイムマシンの屋根裏部屋で見つけた、
さらに小さなタイムマシン。
クレヨンの扉を開くたび、
隣り合せの過去と現在を、行ったり来たり。

見たことのない過去が懐かしくなる時がある。
そんな時、そっと分けてもらう、
クレヨンたちの記憶。

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この記事を書いた人:

もの書き。夫と息子とリクガメと、川沿いの丘の上で暮らす。 日常や世界、音楽や時間を、詩・エッセイ・翻訳にのせて。 代表作「やがて森になる」「月の光」。カレンダー「言葉なきものたちの12ヶ月」 他『扉の言葉』を書いたり、『名まえ』をつけたり。

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