出会いの中に隠れているもの

『これは、きっとチャンスだ。』

この連載は、ドイツを拠点として活動するダンサー振付家、神谷理仁さんのエッセイです。
ダンサーが踊るように描く、出会いに纏わるお話をお届けします。

とても不思議。

世界の人口は70億人を超える。日本だけでも1億2千万人以上。
一生の内で、出会える人と出会えない人の比率を計ったら、途方もなく出会えない人の比が高い。

そんな中で、時間を割いて僕の言葉を読んでくれる人が、何処かに存在しているこの不思議。初めての経験だが、きっとチャンスだ。

個人的で少しポンコツな話を

せっかくのチャンスに、個人的で少しポンコツな話を4回、スローカーブのように投げ込んでみることにした。

語る僕よりも受けとる人の方が、これは、いったいなんだろう?と心の筋肉を使うことになる、と思う。

「?」に連れられて

知らない物や人に出会うと、「?」が浮かびあがり、その違和感や好奇心に導かれて、普段なら行かない処に心や体が連れてゆかれることは確かにある。僕にとって舞台との出会いは、始まりからそんなだった。

今よりも大きな心臓

小学校2年生の時、学芸会で演劇をすることになった。子供達は意気揚々と演じてみたい役に手をあげる。僕は緊張して、手を挙げる勇気がない。小さい頃、いろんなことにいちいちドキドキしていた。今よりもドキドキが大きくて、からだ全体が心臓になった。

ヘンテコな役

結局どの役にも手を挙げられず、一人だけ役を貰えなかった。先生は気づかずに、そのまま稽古を始めてしまったが、誰一人、僕に役がないことを気づかない。

そういうわけで、僕の方は役があるかのように振る舞い始めた。今にも演じ出しますよ風の表情を浮かべて、一喜一憂しながら教室の後ろで動いた。身を隠したり、勇敢な表情を浮かべて少し前へ出てみたり、今思っても、ヘンテコな役。

もうすぐ出番がやってくる。

もうすぐ出番がやって来る。そんな表情を浮かべて教室の後ろに立っていると、気持ちが盛り上り、ひょっとしたら本当に出番が来るような気がした。これが、演じることなのだと、自分なりにグッときていた。盛り上がったり、ガッカリしながら、2週間、ヘンテコな役を演じ続けた。

予期せぬ試練がやってきた。

しかし、予期せぬ試練がやってきた。衣装決めの席で、選ぶ衣装がないことに気づいたのだ。恐ろしい。堪らなくなり、人生初の鬱的フィーリングを味わう。プレシャーに耐えられない。母に泣きつくと、翌日、先生が普通の役をくれた。安心したが、ヘンテコな役は終わってしまった。

アンビバレントな感覚のダンス

へンテコな役を思い出すと、なんだか綱渡りのようで今もドキドキする。シャイなのに勇敢で、怯えながらも一所懸命に戦って。普段なら一緒にいないはずの気持ちが一緒にいる。そういう重なった気持ちのあり方は、踊りとも繋がる。

あの時、衣装決めの席で白を切り通して、衣装を着た子供達にまぎれて、ピョンピョン跳ね回るダンサーが一人いたら、面白かったと思う。

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この記事を書いた人:

振付家&ダンサー。東京都生まれ。フォルクヴァング芸術大学卒業。踊りを通して知らない場所や人と出会うこと、予定調和ではない驚きや想像性と出会える空間をつくることをテーマに活動している。

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