大浦麻衣の「今日も人が好き」

【今日も人が好き】作家・小谷ふみさんをずっと影から支えてきた人。

真っ黒なアイコンと、「文野翳」という謎の名前

こんにちは、店長の大浦です。

「生まれ変わったら、深海魚になりたい」。
生まれ変わったら、モデルになりたい、サッカー選手になりたい、やっぱり自分のままがいい。そんな話は聞いたことがありますが、まさかの深海魚。

どんな人物がそんな想いをもっているのか。暑さの残る9月の東京で、ずっと会いたかったその人に、ようやく私は会ってきました。その人は「文野翳」さん。

「え、なんて読むの?」私もかつてそう思っていました。実は、当店のフェイスブックページにオープン当初からよく「いいね」をしてくれていたのが文野翳さん。アイコンは真っ黒、というより、真っ暗。

「誰なんだろう」。正直、ちょっと怖いなあという気持ちをもっていたのですが、その正体はある日あっさりと判明したのです。

「文野翳」はあの人物の旦那様

「麻衣さん(私の名)にまずお知らせすべき点は、夫の筆名が「文野翳」→ふみのかげ→小谷ふみの影→ダジャレかよ!なことです。」

それは、当店の連載「おやすみの前に」で執筆していただいた作家、小谷ふみさんからのメールでした。ちょっと怖いなあと思っていた人物の正体は、なんと小谷ふみさんの旦那様。「ええええーー!?」この瞬間、私は叫ばずにはいられませんでした。

「おやすみの前に」の末尾にある挿絵は、全て「文野翳」さん、つまりは小谷さんの旦那様に描いていただきました。文野翳さんは、これまでクルミド出版から発行されている寺井暁子さん著書「10年後、ともに会いに」の挿絵を描いたり、小谷さんと共に夫婦で小冊子を発行したりと、会社員の傍ら絵を描く活動を小さく続けています。

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小谷ふみの発見者

文野翳さんがはじめに教えてくださったのは「僕は、小谷ふみの発見者です」という事実。過去の職場で出会ったというお二人。文野翳さんは、小谷さんの言葉に才能を感じ、作品としてまとめることを提案します。文野翳さんの勘は見事にあたり、小谷さんの「青い自転車の夢」は第14回読売新聞こども未来賞に入賞しました。

「普段は誤字脱字のチェックをしてくれたり、ダメ出しばっかなんですよ。」と笑う小谷さん。小谷ふみ、という作家の発見者であり、編集者であり、伴走者であり、一番の理解者でもあることは、お二人の何気ない会話から十分に伝わってきました。

「本人の前で言うのはこっぱずかしいけど」と照れくさそうに前置きをしながら、文野翳さんはこんなことを教えてくれました。

「小谷ふみという人物は、絶望の『望』の人だと思うんです。人の心を救うことができる、と。」

それに加えて「僕は絶望の『絶』の人間なんですけどね。」ときっぱり。とことんダークな自分を認めているところに、明るささえを感じます。

絵の細部に閉じ込められている秘密

今回文野翳さんに描いていただいた絵は、どれも理性で感性を描いているよう。小谷さんの言葉たちを、緻密に計算された上で絵に落とし込めているような世界。そして、描きながら夢中になっていることが伝わってくるのです。

たとえば、「深海魚」の回。不気味だけどちょっと愛らしいアンコウの目の中を拡大してみると、なんと「KOTANI」の文字と人の横顔が!

「書いているうちに、自然とそう見えてきちゃって」と文野翳さん。きっと誰も気づかない部分ですが、楽しんで秘密を閉じ込める。なんてチャーミングな人なんだろうと、私はますます文野翳さんを追いかけたくなってしまいました。

けれども当日はフットサルの試合間の、急ぎ足の雑談のようなインタビュー。深海魚に憧れる人物の正体をじっくり見据えることなく別れを告げることとなりました。

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どうやっても優しさがこぼれてくる人

「夫は、川が痩せていってしまう様子をみて、心を痛めちゃうような人なんです。」
お二人にさよならをした帰りの電車の中、小谷さんのこんな言葉を思い出しました。

真っ黒なアイコンだったり、深海魚に生まれ変わりたかったり、絶望の『絶』の人間、と自分を表現する反面、パートナーが生み出す言葉に寄り添ったり、絵の細部に発見を潜ませたり、川のことを自分のことのように想う心をもつ人。

暗い。たしかに暗い。けれども、人の心にあかりを灯す人なんだろうなあ、と私は想うのです。カーテンもドアも締めて、電気を消した真っ暗な部屋でも、ほんのりと外の光が入ってくるように、どうやっても優しさがこぼれてくるような人。

心に住む人2

2ヶ月に渡って毎週金曜日の20時に公開した、小谷ふみさんの連載「おやすみの前に」。たくさんのお客さまの心に届いたようで、大変嬉しく思っています。はじめから全部を読み通していただいても、また違った味わいがあるので、ぜひ文野翳さんの挿絵にちょっと足を止めながら楽しんでみてくださいね。


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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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