みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン

【みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン】第3回 心に伝わるコミュニケーションとは

<前回の続きです。>

クリエイティブ・ディレクター酒井博基さんから学ぶ、「みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン」。今日は、関わる人たちに、他人事ではなく自分事として動いてもらうためのコミュニケーションのポイントを教えていただきました。

1. 理念だけでなく、下心を伝える

「どういう下心があるか、ちゃんと見せてあげないと関与を引き出し合える関係になれない。きれいごとだけではビジネスって成り立たないと思います。」

この言葉の意味を、商業施設のイベントを例に話してくれました。

「商業施設で賑わいをつくりたい場合、普通だったら自分たちのお金でイベントなどのアクションをしたりしますよね。けれども、地域の人たちが場の持つ理念に共感し、自分たちの活動の場だと思って関わってくれると、商業施設側のメリットってとても大きいんです。本来自分たちで賑わいをつくるために払い続けないといけないお金がコストダウンできたり、自分たちではリーチできない新しい顧客との出会いがあったり。
そのために商業施設側も商業色を弱めたりするなどの努力も必要ですが、本来の目的を明確化して協業者に伝えることはとても重要です。だってビジネスの場でいいことばっかりいう人っていまいち信用できないじゃないですか?」

自分たちの目的やメリットが、いわゆる下心だといいます。この例における商業施設の場合は、地域協業はあくまでも手段であって、目的ではないということ。その根っこの部分を話し合うことで、お互いが理解し合える関係になり、具体的な手段の話がしやすくなるそうです。

美しい理念や熱い志を伝えることももちろん大切ですが、それだけではなく、まずは手の内を見せることが、人を動かしたり、プロジェクトを動かす時の要になるようです。

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2. ぶつかりそうになったら、視点を変えてみる

「合意形成をとるのが自分の仕事かもしれない」とも言う酒井さん。たとえ競合という関係であっても共通の目的を見出し、両者にとってプラスになる方向性を模索し「これでいこうね」と手を握ってもらう。そのためには、俯瞰した視点が大事だと言います。

特に競合関係の合意形成って本当に難しいんです。プライドがあってなかなかお互いの弱みを見せ合わないから。さらには相手側の利益につながることを自分側から提案することをとても嫌がるケースが多いんです。だからなかなか合意形成に到らない。

でも合意形成って自分だけが得をして目先の利益を得ることではなく、俯瞰した視点で共通の目的を見出し、互いの弱みを理解しあったうえで強みを持ち寄り双方にとっての利益を創り出すこと。その一番良い落とし所を探り当て、コミュニケーションの交通整理をするのが僕の仕事なんです。だからいつも板挟み状態になっちゃうんです(笑)。

何百万円というお金が動いたり、色々な利害が絡みあうような大きなプロジェクトでは、人と人とのぶつかり合いを避けることは難しいはずです。関わる人たちの板挟みになって苦しむのではなく、両者の架け橋になるにはどうすれば良いのか。

人と人がぶつかり合いそうになった時、双方の主張や感情をクッションのように吸い込む緩和剤になるだけでなく、うまく視点を変えて、「あっちへ進んでみたら、こんな未来も描けるかもね」と導くことで、ようやく架け橋になれることを、酒井さんは教えてくれました。

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3. 関与を引き出す

プロジェクトを動かす時、関わる人たちがぶつかり合うこともあれば、逆に全く動かないというケースもあります。受け身の態勢の関係者を動かすためのヒントを、酒井さんが大学で授業をもつ時に実践していることを例に、教えてくれました。

「最初の授業の時に、だいたいの先生は私語をやめてください、って言うと思うんだけど、僕の場合は『納得したら、うなずいてほしい。冗談を言ったと思ったら、笑ってほしい。みんなのパフォーマンス次第で、僕も人間だから、気分が良くないとうまく話せない。場の空気をつくることに協力してくれたら、それなりの情報を僕から引き出せるかもしれませんよ。』と伝えています。」

「関与」という言葉は、関わり、与えると書きます。ただ関わるだけでなく、相手に与えようと行動するとこまで引き出せて、ようやく物事を動かすスタート地点に立てるのかもしれません。関わる人たちが「自分事」として動いてくれるかどうか。

酒井さんの言葉は、クリーンな正論を言うのではなく、どこか可笑しさを含む人間味のようなものが滲み出ていて、だからこそ人の心に届くのかもしれません。

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4. 想像力を最大限に働かせる

酒井さんのお話を伺っていると「相手の立場を考えること」のプロフェッショナルだということがわかってきました。そしてそれは元からもっていた能力ではなく、想像力の訓練だと言います。

「手段が目的化している人が多いように感じます。想像力が乏しくて、作業がオペレーショナルになっちゃっている。人に『伝わる』の先にあるのは、『感動』だと思うんです。感じて動く。僕らはお客様からお金をもらっている以上、お客様に動いてもらわないと商売にならなくて、そこができてプロなんだと思います。例えば、三ツ星レストランって単なる味に対する評価ではないですよね?お客様に喜んでもらうために、お料理、接客、空間などすべての要素に対しどれだけの想像力を働かせているかの評価だと思います。」

つまり自分が「伝えた」つもりというのはただのオペレーションであってコミュニケーションではない。相手の気持ちを動かすことができてはじめて「伝わる」コミュニケーションと呼べるのだそうです。酒井さんはコミュニケーション力を高めるため、日ごろから想像力を最大限に働かせることを意識しているそうです。

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コミュニケーションをする中で、関わる人がどう動いてほしいのか。目的を理解した上で、目的に対して想いやりをもつ。そこができないと、人は動かないのだと、酒井さんは言葉に力を込めて教えてくれました。

心に伝わる、心を動かすコミュニケーションとは、情と理の両方のバランスが大切なのかもしれません。相手を想う心と、相手を想う頭。両方があってこそ、「伝える」が「伝わる」になれるのだと教わったような気がします。

<続く>

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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