みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン

【みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン】第1回 クリエイティブ・ディレクター酒井博基さんから学ぶ、みんなの関与を引き出すプロジェクトデザイン術

どんな仕事においても、共通していることが一つだけあるとしたら、それは人との関わりを避けられない、ということ。人と関わることは、面倒くさくて煩わしいものです。決して一筋縄ではいかず、複雑に絡みあうこともあれば、いくら引き寄せても反発し合ったり、常に難しさがまとわりつくもの。

けれども、できることならば、関わる人を笑顔にしたい。そしてやっぱり、自分だって笑顔になりたい。

関わる人みんなが幸せになるために、どのように働けばいいのか。そもそもみんなが幸せになる道は存在するのか。そんなヒントを学ぶために、クリエイティブ・ディレクターの酒井博基さんにお話を伺ってきました。

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みんなの関与を引き出す、持続可能なプロジェクトの実現方法を聞く

酒井さんは現在、クリエイティブ・ディレクターとして、企業が抱える課題を解決するためのひとつの手段として、商業施設と地域の架け橋になりながら、企業のマーケティング価値の最大化と街づくりの活性化を融合させたコミュニティデザインに関わるプロジェクトに携わっています。

通常コミュニティデザインというと行政から委託される仕事と思われるかもしれませんが、酒井さんのプロジェクトの特徴的なところは、企業の統合的なコミュニケーション戦略の一環として位置づけ、ビジネスと街づくりを両立させているところ。大手鉄道会社やデベロッパーなど大きな資本をもつクライアントと手を携えて、プロジェクトを持続可能な形で実現させることを目指しています。

そのままでは無機質なお金のやり取りなってしまう場所に、贈り物のような仕組みを作り、ビジネスと街づくり、経済と人の心、その両方に寄り添う仕事をしてきた酒井さん。どうすれば関わる人みんなが満足するようなプロジェクトにできるのか。みんなの関与を引き出し、持続可能なプロジェクトを実現させるためにはどうすれば良いのか。人と関わりながらプロジェクトを動かす時に役立つヒントを、特集「みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン」では学んでいきたいと思います。

まずは関わる人がみんなハッピーになるような、考え方のポイントを。次に、関わる人を動かすために実践できる、コミュニケーションのポイントを。そして最後に、関わる人たちを統括するような、プロジェクトのトップに立った時に大切になるポイントを酒井さんから教えていただきます。

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出発点は、1杯500円のコーヒー

酒井さんは、もともとはクリエイター志向の持ち主。デザイナーを目指し美大へ通ったものの、才能ある周囲の先輩たちが、ビジネスとものづくりの間にある大きな壁にぶつかり挫折する姿を目にして、デザイナーも上流工程と呼ばれる経営戦略の部分まで入っていかないといけないという危機感を感じます。そこで、まずは自分のお金で自分のプロジェクトをつくるため、高円寺で「カフェ・アパートメント」を開くことに決めました。

そこはお客さま同士が仲が良いカフェ、と呼ばれるような場所。1杯500円のコーヒーを出すことも、数千万のプロジェクトを動かすことも、やっていることはそんなに変わらないと酒井さんはいいます。

「カフェは自分のビジネスの出発点。人から500円もらうって簡単なようでまあまあ大変だなって。お店を継続するために、お客様に繰り返しきてもらうためには、500円以上の価値を提供する必要があるんです。価値とお金を直接やりとりする現金商売という原始的なビジネスを通じて、その感覚を身体に刷り込んだ経験はとても大きいです。カフェをやっていた頃と今はエライ違うことやっているねって言われても、価値を提示し、報酬をもらうという意味では僕の中では一貫してやっているつもりです。」

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グッドデザイン賞ベスト100に選ばれた
「コミュニティステーション東小金井」
の裏話

今回インタビューをさせていただいた場所は、酒井さんが関わったプロジェクトの一つ。中央線の東小金井駅の高架下を活用したコミュニティステーション東小金井は、今年のグッドデザイン賞を受賞し、注目を集めているちょっと変わった商業施設です。

商業施設というと、ナショナルチェーンばかりが並び、どこの街でもコピペのように同じ風景が並んでいたりしますが、コミュニティステーション東小金井に並んでいるテナントはほとんどが地元の人たち。けれどもコンビニも協業しているという、ビジネスと温もりの共生が伝わってくる場所です。

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酒井さんがこのプロジェクトに関わった発端は、JR中央線三鷹~立川駅間の高架化事業をしていたJR中央ラインモールから「沿線の価値を向上させるために、この地域に住んだり、働いている方たちと一緒になって地域全体を活性化していきたい」という相談を受けたことから。

そしてプロジェクトのはじめの一歩としてスタートしたのが、エリアマガジン「ののわ」。酒井さんはどのように提案し、関わる人たちを繋ぎ合わせたのか。裏側を少しだけ教えていただきました。

「まずはじめにこの高架下がJRだけのものではなく、街の人のものでもあると思ってもらうための土壌をつくる必要があると思いました。そのためには、開発を進めていく上でJRと地域が協業し、一緒になって賑わいをつくることが大切。ハコをつくる開発事業ってエネルギーのほとんどをハコづくりに費やしていて、ハコができてからの話ってオマケレベルでしか検討されていないことに危険性を感じています。はじめは賑わうかもしれないけれども、賑わいを継続させるためには自分たちがお金を投下し続けないといけない。

マガジンをつくることで、地域でおもしろい活動をしている人たちを取り上げ、JRと地域の接点づくりをする。さらにその人たちを巻き込み、トークイベントやワークショップを開催することで、その活動に興味をもった人とつながるチャンスが生まれる。そうやって人の輪がどんどん広がり、このプロジェクトに賛同する協力者のネットワークが生まれます。それが開発を進めていく上で非常にプラスになるんです。」

ただ「マガジンをつくりましょう」という提案をするのではなく、ハコができてからの持続可能な賑わいづくりを視野に入れて、JRと地域を繋ぎ合わせるような説得をする。こんな風に、関わる人たちの間に立ち、それぞれの言い分を翻訳させながら繋ぎあわせて、合意形成を図り、人とプロジェクトを動かすような仕事に日々奮闘しているそうです。

明日からは具体的な学びのポイントをご紹介します。まずは関わる人がハッピーになるような、考え方のヒントから学びます。明日からどうぞお楽しみに!

<続く>


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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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