わたしたちの体験ノート

【わたしたちの体験ノート】ものをつくる過程が見えづらくなった時代に、時間と心と体を注ぎ込むものづくりの意味

<この記事は、こちらの続きです。>

高さも、角の丸みも、板の模様も、全てを自分で決めていく

製材を終えた後は、加工のための線引き、組み立て作業が続いていきます。

血液型で決して人の性質は決まるわけではないと思うのですが、私はO型、大雑把な性格であると自認しています。そしてこの加工のための線引きの作業が、私にとっての一番の難関でした。テーブルに足をつけるために、穴をあけるのですが、その位置を決めるためには測る、計算する、そして線を引いていきます。せっかく正確な定規を手にしたとしても、なぜかズレてしまい、最終的に私は大混乱に陥りました。

「大浦さん、何型ですかー?」にこやかに聞くオーナーの細井さん。
「あ、O型です。。」小さな声で答える私。
「やっぱり~!O型の人には線を引かせません!」満面の笑みで定規を私の手から取ると、ささっと意図もたやすく線を引いてくださる細井さん。もはやその手つきは魔法のように見えます。

長年ほしいと想い続けてきたテーブルを、自分の手でつくるという決断をした私。つまりは、板の表と裏も、足の位置も、テーブルの高さも、角の丸みも、全て自分で決められるということです。

このテーブルを作りたいと思った一番のきっかけは、子どもがごはんを食べやすいテーブルにしたかったから。子どもの足がぶつかるかな、走って角に頭をぶつけたりしないかな、もぐって遊んだりするかな、そんなことを想像しながら自分だけの形を考えていく作業でした。

組み立てる時も、その後のやすりをかける作業の時も、何度も何度もテーブルを触ります。自分の手で確かめながら、自分の手で感じながら。そして触れる度に、このテーブルへの愛おしさも増してくるのです。仮組みの段階になり、テーブルの姿にはじめてなった時は、もう飛び跳ねたいくらいに嬉しかったことを今でも鮮明に覚えています。

家の中に生まれた「ひとつの軸」

夏の終わり、9月に入った頃、ようやくテーブルが完成しました。

これからの人生、一緒に過ごしていく存在。制作を通じて、死ぬまで手もとに置いておきたいと心に決めたこのテーブル。はじめて家の中にやってきた時は、自分で言うのもなんですが、あまりにも素晴らしくて、今の自分たちはまだ追いついていないのでは、とさえ感じました。

けれども同時に「ひとつ軸ができた」とも思ったのです。
これからは、このテーブルに合うようなお皿を、空間を、生活をつくっていこうと。

テーブルに触れると、木の生命力が伝わってくるよう。森の中にいるような、清々しい気持ちに。名前は「せんちゃん」と名づけました。子どもがおもちゃでテーブルをガンガンした時には「せんちゃんが痛いって言ってるよ!」というと、子どもはピタッと手を止めてくれます。せんちゃんは我が家で一員として、常に家の真ん中に在り続けています。

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時間も体も心も注ぎ込む、ものづくりとは

買ってきたものではなく、誰かに作ってもらったものでもなく、自分の手でつくったもの。それでいて、生活の大部分を一緒に過ごす存在で、日々使い続けていくもの。

この体験は、ただ単純に「テーブルを作りました」という言葉には収まりきらない、今まで出会ったことのない種類のモノとの関係性がうまれたように思います。

モノだけれども、生き物のような。心の底から「大切にしたい」と切に願うような存在。一枚の板から、どうやってここまで形になったのか。そのプロセスで、心と体にしっかりと刻まれているから。

モノをつくる、というのは、職人やデザイナーといった職種の人だけがやるものではなく、もっと誰にでも開かれていて、誰でもできるもの。わざわざ自分の手で時間をかけてモノを作っていくのは、面倒くさいと思う人もいるかもしれません。けれども、ただ消費するのではなく、時間も体も心も注ぎ込んで作り出すモノというのは、きっと見たことのない風景を、それでいてどこか体が記憶している風景を映し出してくれるような気がします。

あの風景をもう一度みたくて、次はいつ木工房に通おうかと、私の心はまた動き始めています。

▶「みんなの木工房」テノ森
住所:〒811-3304 福岡県福津市津屋崎5丁目45−10
URL:http://www.tenomori.jp/

この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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