今日も未来も、残したいモノと想い

【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイ「桃太郎」

特集「今日も未来も、残したいモノと想い」、ここからは3日間連続で、作家・小谷ふみさんによる「今日も未来も、残したい想い」をテーマとしたショートエッセイをお届けしています。本日は、2日目の作品「桃太郎」です。(前回の作品はこちら)


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桃太郎

今年の誕生日プレゼントは、音楽プレーヤーにして正解だった。
昨日の夜、青春を駆け出したばかりの、
君のお気に入り曲の数々を教えて貰った。

買い物の帰り道、
ふいに一曲を思い出し、聞いてみて
気づいてしまった。

恋を、しているの?

今まで「オレ、頑張れ!」みたいな汗臭い歌ばっかり聞いていたのに、
「これが一番好きなんだ」と言っていた曲の歌詞に、
どきっとしてしまった。

しかも、別れの歌。
こんな歌詞の意味が分かるようになったんだ。

「桃太郎」みたいに育ったらいいなと思ってきた。
「気は優しくて、力持ち」な男の人になるようにと。

でも、「太郎」の部分がなくて、桃みたいに育ってしまった。
太郎部分は、どんぶらこっこ後から流れて来るかと思っていたけれど、
どうやら母には、桃の部分しか育てられないみたいだと、
最近、気づきはじめていた。

あとは、大事な人ができたりして、
その人を守るために、悩んだり傷ついたりして、
自分で作っていくしかないんだと。

自転車の後部座席に、小さな君を乗せて走った日々を思い出す。
ここから先は、君が大事な人を後ろに乗せて走るんだ。

夕暮れ、歌を聴きながら、
ちょっと泣けるのは、
何でかな。


つづく

この特集の目次

  1. 【今日も未来も、残したいモノと想い】SNSで手軽に残せる思い出からは、こぼれ落ちてしまっている想いをみつめる特集を始めます。
  2. 【今日も未来も、残したいモノと想い】私に残されたのは、人生最大の断捨離の元、揺らぐことなく残った祖母の指輪
  3. 【今日も未来も、残したいモノと想い】いつか彼らに求められなくなる日まで。家族と共に時を刻む木の時計を息子へ。
  4. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイが始まります。
  5. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイ「桃太郎」
  6. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイ「心の形」
  7. 【今日も未来も、残したいモノと想い】家族への「想い」を一冊の中に束ね、積み重ね、いつか人生が終わった時に、家族への贈り物になるようなノートがあったなら。

お知らせ

心がひとりぼっちになった時、そっと言葉で明かりを灯してくれる本、当店オリジナル、作家小谷ふみ著書「よりそうつきひ」が発売となりました(ご購入はこちらから)。 どこか切なくて、寂しくて、愛しくて、ホッとする。なんでもない一日を胸に焼き付けたくなるようなショートエッセイが束ねられた短編集です。読んでいると大切な人の顔が心に浮かんでくる世界が広がっています。

この記事を書いた人:

「よりそう。」館長。時として編集長に変身し、ライターとして駆け回り、ドローンも飛ばしちゃいながら、訪れるみなさんをお出迎えします。好きな本は、稲葉俊郎『いのちを呼びさますもの』。好きな料理は、さつまいも料理。
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いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

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