今日も未来も、残したいモノと想い

【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイが始まります。

特集「今日も未来も、残したいモノと想い」、今日から3日間は作家・小谷ふみさんによる「今日も未来も、残したい想い」をテーマとした3篇のショートエッセイをお届け致します。

小谷さんとの出会いは、遡ること3年前。当店がリニューアルする前、ちょうど本を出版したばかりの小谷さんにインタビューをさせていただきました。その著書「やがて森になる」(クルミド出版)は、日常の中で湧き上がってくる、小さな感情や想いを、ていねいに掬い取ったようなエッセイが綴られています。私はこの本に出会った時、妻であり、母親であり、娘でもある自分の役割や側面の中で苦しくなったり、悩んだりしていたのですが、小谷さんの言葉を通じて、それでいいんだと肩の力がふっと抜けて、心が救われました。 そして、子どもと過ごす、一日、一瞬をもっと大切にしたいという気持ちが、読み終えた後じわじわと湧き上がってきたことを、今でも憶えています。

時に声を出すほど笑えて、時に涙がこぼれ、読む人の心をほぐしてくれる、小谷さんの織り成す言葉たち。季節が何度巡っても、同じ場所に立ち続ける一本の木のように、ちょっとした風では吹き飛ばされることのない、心に刻まれていくような言葉たちを、今回は手書きで綴っていただきました。呼吸さえもにじみ出てきそうな、手書きの文字。それは、その瞬間にしかない、その人しか書けない、心の声のようなもの。

今日から3日間、みなさまの大切な人を思い浮かべながら、ぜひお楽しみくださいね。

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小谷ふみ

言葉を配達しています。
日常や世界、音楽や時間を、詩・エッセイ・翻訳にのせて。代表作「やがて森になる」「月の光」。
他「扉の言葉」を書いたり、「名まえ」をつけたりもします。


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時計

今日は夕暮れの風に、
胸いたむ、かなしい知らせを聞きました。

こんな時はいつも、
「目が覚めたら、もう80歳位になってないかな」
なんて思ったりします。
気がついたら、辛いこと、嫌なこと、
全部終わっていたらいいのにと。

でも最近になって、
老いを知り初めたあなたと、
大人になりつつある君との日々を、
そんな風に早送りしたくない、
そう感じるようになりました。

そして、家族より、友達より、
少しだけ、長く生きて、
ともに生きた笑顔やため息の日々を、
少しだけ、長く覚えておきたいとも、
思うようになりました。

覚えている人がいる限り、
ずっと残り続けるから。

だから、この時計が、
ちょっとでも長く動くように、
もうちょっとだけ、
丈夫に、強くなりたいのです。
身体も、出来ることなら心も。

最後に、
ひとりぼっちのおばあちゃんになったら、
たまに会う、おじいちゃんになりかけの君に、
あれやこれや覚えていることを語る。

君が生まれた日の写真、
あなたの走り書き、
ほんの少しの大事なものに囲まれて。

最期には、
そこに自分自身を並べ、
夫の光に重なるように、
微笑みに消えるのだ。


つづく

この特集の目次

  1. 【今日も未来も、残したいモノと想い】SNSで手軽に残せる思い出からは、こぼれ落ちてしまっている想いをみつめる特集を始めます。
  2. 【今日も未来も、残したいモノと想い】私に残されたのは、人生最大の断捨離の元、揺らぐことなく残った祖母の指輪
  3. 【今日も未来も、残したいモノと想い】いつか彼らに求められなくなる日まで。家族と共に時を刻む木の時計を息子へ。
  4. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイが始まります。
  5. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイ「桃太郎」
  6. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイ「心の形」
  7. 【今日も未来も、残したいモノと想い】家族への「想い」を一冊の中に束ね、積み重ね、いつか人生が終わった時に、家族への贈り物になるようなノートがあったなら。

お知らせ

心がひとりぼっちになった時、そっと言葉で明かりを灯してくれる本、当店オリジナル、作家小谷ふみ著書「よりそうつきひ」が発売となりました(ご購入はこちらから)。 どこか切なくて、寂しくて、愛しくて、ホッとする。なんでもない一日を胸に焼き付けたくなるようなショートエッセイが束ねられた短編集です。読んでいると大切な人の顔が心に浮かんでくる世界が広がっています。

この記事を書いた人:

「よりそう。」館長。時として編集長に変身し、ライターとして駆け回り、ドローンも飛ばしちゃいながら、訪れるみなさんをお出迎えします。好きな本は、稲葉俊郎『いのちを呼びさますもの』。好きな料理は、さつまいも料理。
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いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

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