今日の草木花

【連載|今日の草木花】季節外れの紅葉は、楠の春の衣替え。

息子の通う幼稚園には、樹齢60年位かと思われる楠の巨木が二本。どっしりと根を張り、のびのびと枝葉を広げ、子供たちの遊ぶ園庭に気持ちの良い木陰を作っている。

春から芽吹きの新緑の季節にかけて。新年度を迎え、進級、クラス替えなどでそわそわしている時期、この楠もなんだか様子が落ち着かない。

この時期、楠は紅葉するのだ。
赤や黄に色付いた葉を、はらはらと落としている。大木が二本もあるので、その量はすごい。風に揺れると、葉っぱが「降っている」という感じ。毎日本当に綺麗にお掃除してくださる園庭だが、それでもちょっとの間にすぐに葉っぱが園庭の隅や、階段の吹き溜まりに、もう、溜まりつつある。

ある日、用事があって夕方息子をお迎えに行くと、プレゼントを渡された。色付いた楠の葉っぱを拾って、束ねて、お花に見立てたもの。ゴムで縛ってまとめてある。先生と一緒に作ったのだとか。

秋じゃないのに、秋の風情の、手のひらサイズの立派なお花が一輪。造形の面白さ。そして、なんだか妙な季節外れ感。でも、楠にとっては只今そういう季節なのだ。

ちなみに、楠は紅葉して落葉するとほぼ同時に、新緑が芽吹いている。新しい葉に押し出されるように、古い葉が落ちてゆく。いわゆる落葉樹のように、裸の枝で過ごす時期が無いように見える。その楠独特の春の衣替えに、この紅葉した葉っぱの花を受け取って、初めてはっと気が付いた。

この記事を書いた人:

東京都生まれ。思春期に米国NY州で数年間を過ごす。 博物館学芸員アシスタント、外資系企業での職務を経て、現在子育てをしながら、少しずつ文章を書いたり、絵を描いたりしている。
素朴で丁寧な暮らしに憧れ、骨董品や器を見るのが好き。夫の影響でキャンプなどのアウトドアも好き。
英検一級、学芸員資格を持つ。横浜在住。 日常のなかにあるちょっとした美しいもの、ことを、文章や絵にしてお届け担当。普段は妻・母として、夫と長男、長女の四人家族を支えているような、支えられているような。

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