今日も未来も、残したいモノと想い

【今日も未来も、残したいモノと想い】いつか彼らに求められなくなる日まで。家族と共に時を刻む木の時計を息子へ。

<今日も未来も、残したいモノと想いを綴る特集、「私が残したいモノ編」は、店長大浦が息子たちに残したいモノにまつわるエピソードを綴ります。プロローグはこちら。>

大人になっても使ってほしいから、選んだのは木の時計

こげぱんさん。
我が家では、そう呼んでいるこの時計。長男の1歳の誕生日に、夫と私から贈ったプレゼント。大人になっても残るようなものが良いと思い、木で作られたこの時計に決めた。

去年の秋に、骨董市でぼんぼん時計に出会うまで、我が家の時計はこげぱんさん1台だけだった。いつも家族みんなが見上げる時計。「幼稚園のバスが来ちゃうよ。」「そろそろお昼ごはんにしようか。」「おやつの時間になった~!」。いつもこげぱんさんが教えてくれている。

大人になっても使ってほしいから。その理由で選んだこの時計。さて、いつ息子に渡そうか。少し、想像してみる。ひとり暮らしを始めるために、家を出る時か?結婚することが決まって、自分の家庭を築き始める時?それとも二十歳の誕生日?答えはなかなか出てこない。

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水のようにいくら掬ってもこぼれていく、今この瞬間の連続

「ままー、あいうぉんちゅ~」そう言いながら唇を尖らせて迫ってくる息子(いつの間にそんな言葉を覚えたんだ?)。こんな風に、じゃれて甘えてくるのは、いつまでなんだろう。

動物番組を見ていると、動物たちはなんともあっさりと子育てを終えている。巣に取り残されたフクロウの子どもを見て、群れを離れて独りで狩りに奮闘しているトラの子どもを見て、親たちはどんな想いをしているんだろうかと、私は勝手に一人で胸が締めつけられている。

今はただ、記憶の上書きがこわい。

次男が生まれてから、長男もこんな宇宙語を話していたっけ、こんなに小さくかったっけ、といちいち信じられないほど驚いている自分がいる。

「子どもというのは、いつだって今が一番かわいいんです。」

何かの本で読んだこの言葉。この瞬間の、目の前の子どものかわいさを忘れたくない。この笑い方、この手の動き、この柔らかさ、このにおい。どうやって取り留めておくことができるんだろう。手の中で水がこぼれていくように、いくら掬ってもとどめておくことのできない、今この瞬間の連続。

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いつか彼らから求められなくなる日まで

子どもたちは、確実に日々成長をしている。こげぱんさんを手渡すその日は、ほぼ間違いなくやってくる。

こげぱんさんは今日も変わらず、時を刻んで、私たち家族を見守ってくれている。この時の刻みと共に、子どもたちと何を刻んでいこう。

「あいうぉんちゅーってどういう意味?」息子がたずねる。「あなたがほしいっていう意味だよ」。息子は「ふーん」だけ言うと、弟のおでこにちゅーちゅーしながらまたじゃれあい始めた。

こんなに人から求められている時期って、今だけかもしれない。母親になって、初めて味わったこの感覚。いつか彼らから必要とされない時期がやってくることを覚悟しながら、こげぱんさんを手渡すXデーを目指して、今日この瞬間を刻んでいきたい。

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店長大浦の「私に残されたモノ編」「私が残したいモノ編」完。明日からは作家・小谷ふみさんによる「私の残したい想い」をテーマとしたショートエッセイ公開します。<つづく

この特集の目次

  1. 【今日も未来も、残したいモノと想い】SNSで手軽に残せる思い出からは、こぼれ落ちてしまっている想いをみつめる特集を始めます。
  2. 【今日も未来も、残したいモノと想い】私に残されたのは、人生最大の断捨離の元、揺らぐことなく残った祖母の指輪
  3. 【今日も未来も、残したいモノと想い】いつか彼らに求められなくなる日まで。家族と共に時を刻む木の時計を息子へ。
  4. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイが始まります。
  5. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイ「桃太郎」
  6. 【今日も未来も、残したいモノと想い】作家・小谷ふみさんのショートエッセイ「心の形」
  7. 【今日も未来も、残したいモノと想い】家族への「想い」を一冊の中に束ね、積み重ね、いつか人生が終わった時に、家族への贈り物になるようなノートがあったなら。

お知らせ

心がひとりぼっちになった時、そっと言葉で明かりを灯してくれる本、当店オリジナル、作家小谷ふみ著書「よりそうつきひ」が発売となりました(ご購入はこちらから)。 どこか切なくて、寂しくて、愛しくて、ホッとする。なんでもない一日を胸に焼き付けたくなるようなショートエッセイが束ねられた短編集です。読んでいると大切な人の顔が心に浮かんでくる世界が広がっています。

この記事を書いた人:

「よりそう。」館長。時として編集長に変身し、ライターとして駆け回り、ドローンも飛ばしちゃいながら、訪れるみなさんをお出迎えします。好きな本は、稲葉俊郎『いのちを呼びさますもの』。好きな料理は、さつまいも料理。
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いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

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