大浦麻衣の「今日も人が好き」

魚譜画家・長嶋祐成さんに教えてもらったエビと一緒に暮らすハゼの話から想う、誰かと共に生きる上で大切なこと。

魚譜画家・長嶋祐成さん

魚譜画家・長嶋祐成さん

「エビと一緒に暮らすハゼがいるんですよ。」

目の見えないエビは巣穴を掘るのが得意。そんな彼の代わりに巣穴の外で見張りをするハゼ。エビはハゼに触角を当てて、外敵が近づいたことがわかると、一緒に巣穴に逃げ込む。ハゼはエビが巣穴に引っ込んでから自分も隠れるのだという。なんだかほっこりしてしまう「共生」の話。

魚譜画家・長嶋祐成さんからこの話を聞いたのは、2年前の福岡へ移住する前のお別れ会の時でした。あまりに熱く語るその姿が忘れられなくて、当店iPhoneケースのモチーフにもなったわけなのですが、この話、長嶋さんのブログ「魚の譜(うおのふ)」ではこう描かれています。

しかし忘れてはならない。実際は、彼らに「助け合い」の精神など微塵もないはずだ。ハゼは自らの安全のために頃合いのエビの巣穴を利用し、エビもまた自らが危険を避けるために同居人を利用している。テッポウエビは普段から常にハゼの身体に触角を触れさせており、危険を察知したハゼの瞬間的な身の震えを読み取っていち早く巣穴に飛び込んでいるだけであって、決してハゼから居候のお礼に危険を知らせてもらっているわけではない。
ここにあるのは心温まるストーリーではなく、一部のハゼとエビがこうすることによって高い確率で生き延びてきたという無表情な事実だ。

「無表情」―まったく、自然というものはとことんそうなのだ。この小さなハゼとエビに健気だといって味方するわけでもなく、また例えば他の生き物を死ぬまでしゃぶり尽くすような悪魔的な寄生虫に罰を与えるわけでもない。ただ淡々と、生き延びるものと滅びるものとを区分けしてゆく。人間とて、その冷たいまなざしから逃れることは絶対にできない。-出典:魚の譜「共生ハゼ」

ただ単純に「もう魚が好きでたまらない!」というだけならば、きっとそこまで人は惹かれないけれど、こんな風に魚の向こう側にある、自然のこと、時の流れのこと、命のことなどに思いを馳せたくなるから、長嶋さんの絵と文章は人を惹きつけるのだろうなあと、魚の譜を読む度に私は感じています。

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共生ハゼから教わる、誰かと共に生きることで大切なこと

この共生ハゼ。ほっこりしたストーリーでもなんでもなくて、ただ生き延びるための一つの形であるけれども、お互いを補い合ったり、支え合ったりすることは、やっぱり大きな力になるのでは、と思うのです。一人の力で大海原を生きていくのもかっこいいけれど、誰かと共に生きることって悪くないな、と。親と子の関係に当てはめてみても、親が一方的にギブをしているわけではなくて、子どもに支えられている、癒やされている部分もあります。

そして誰に言われたわけでもなく、目の見えないエビが巣穴に先に入るよう、自然と動けるハゼの姿に、誰かと共に生きることで大切なことを教えてもらっているような気がしてしまうのです。自分のことを振り返ると、先に巣穴に入って見張りもサボってばかりかもしれない、もう少しハゼを見習おう、と密かに反省中です。

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「世界の入り口を用意するために、親のエゴは押し付けていいんだと思います!」

2年前の食事会、こんな話もしてくれました。それは親のエゴの話。私たち家族が福岡へ移り住むのは、子どもをそこで育てたいと思ったから。けれども子どもの環境を親の都合で変えるのは可哀想だ(例えば小学校のタイミングで引越したりしたら、友達と離れ離れにさせてしまう)、という声も周りにはあるのだと話したところ、「世界の入り口を用意するために、親のエゴは押し付けていいんだと思います!」と共生ハゼと同じテンションで熱く語ってくれた長嶋さん。子どもははじめからYES、NOが言えないし、自らの手で選択肢を探すこともできない。ならば、自分で探せるようになるまでは、いろんな扉、入り口を親が見せてあげれば良い。そして自分たちが大切にしているものはこれだよ、とただ伝えれば良い。それに対して、子どもの成長と共に好き嫌いや反抗、あるいは逆にハマってもいいじゃないか、と。

この言葉を聞いて、私はこれから進むべき道にしっかり足を踏み下ろして、前を向いて歩けるような気持ちになったことを、今でも覚えています。

最近読んだ本に、写真家・杉本博司さんのインタビューでこんなことが書かれていました。子どもの時の原体験と20代までの経験によって、その後のアウトプットは決まってくる、といった内容。5歳と1歳の息子との生活は、日々料理、洗濯、片付けをこなすだけで精一杯なのですが、実はかけがえのない、超重大ミッションに無意識に関わっているのでは、と私は今更ながら気付いたのです。「責任、重いなあ」と正直思ってしまったのですが、ふと長嶋さんの言葉も思い出したのです。

「自分たちが大切にしているものはこれだよ、とただ伝えればいい」。それはエゴと言われても全然良くて、今できることは日々の中でいかに伝えていくことなんだなあ、と改めて思ったのです。
長嶋さん、ウェブ上の言葉も、会って話しても、どこを切り取っても奥深い人なんです。今は石垣島の暮らしをどうやら楽しんでいる模様。きっと人間としての面白さも奥深さもさらに増しているんじゃないかと思います。

現在、長嶋さんのiPhoneケースを購入していただいたお客様には、原画をプレゼントするキャンペーンも実施中です(抽選制です)。もちろん共生ハゼも対象となっています。誰かの手の中で、この共生ハゼの物語が生きていってほしいと、ほんのり願っています。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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