ドキュメント“ものをつくるということ”

絵の向こう側にある海の世界と人を繋げるために、僕は描き続ける。(魚譜画家・長嶋祐成インタビュー後編)

(前編からの続きです。)

海の魅力に取り憑かれた1年で見えてきたもの

去年1年。長嶋さんは、子どもの頃から憧れていたある魚を追いかけているうちに、海の魅力に取り憑かれた1年だったといいます。真鶴、伊豆、函館、石垣島。さまざまな海へ足を運ぶうちに、釣りの形は、どんどんと「水際」へ近付いていったそう。
磯で足を浸けて釣りをするようになって感じたのは、海への恐怖心。

僕を惹きつけたのは、海の持つ莫大なエネルギーだった。潮が満ちてくるときのひと波ひと波のうねりは、全力疾走するチーターの胸の動きのようにダイナミックで、そして人間にはまったく読みえない意思を持っているように見えた。「何を考えているのか分からない」という恐怖心が、磯にいる間じゅう常にあった。−出典:魚の譜 ムラソイ Sebastes pachycephalus

恐怖を感じることは、自分が海とどのように関わるのかをより深く考えることに繋がっていったようです。小さな頃から魅了され続けている、水や海の生き物の世界。その世界に触れることでもたらされる豊かさを知っている人間が描く魚の絵は、その絵の向こう側へと見る人を導いていく力があるように思います。

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ミュージアムショップは、子どもの一日の水族館体験の最後の接点

海との関わりを考える出発点に立っていると感じた去年末。今年の4月からは石垣島に2年という期限で移り住み、魚の絵を描きながら、水や海の生き物に関わる仕事をしていきたいと考えているそうです。

その中の一つに、京都水族館の魚名板(水槽横のパネル)の絵の制作が最近完成したとのこと。水族館と関わる仕事においては、ずっと目標にしていることがあるそうで、それはミュージアムショップの在り方を変えたいという、大胆な発想。

「水族館を出たところにあるショップは、子どもの一日の水族館体験の最後の接点で、あそこで子どもに何を渡してあげられるか、何を持ち帰らせてあげられるかがすっごく大事だと思うんです。」と熱く語る長嶋さん。さらにこう続けます。

水族館はエンターテイメントで人を惹き付けつつ、もっと文化的な立ち位置 になれる要素もあると思う。公共の文化施設でなにかを学びたい、なにかを発信したい、というのは美術館と同じだと思うから、そういう層にも来てほしい。
そのためには、ショップだけで集客できるような、その水族館の形というのを打ち出せればいいと思う。」

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水族館には、まだまだ潜在的なターゲットに働きかけができていない現実問題があるようです。美術館等へ足を運ぶ、向上心のある若年層だけでなく、サーフィンやスキューバダイビングをしている本物の海を愛しているような層も。けれども、水族館の水槽の配置換えや、中身の入れ替えさえも簡単にはできないもの。そこで、手近に変えることができるミュージアムショップの存在が鍵になるのでは、と考えます。

「こんな夢を語りながら、4月からは特に何も決まっていないんですけどね。」と照れ笑いをする長嶋さん。今後は個展などを開きながら、まずは石垣の海を味わう暮らしを大切にしていきたいそうです。

4月から始まった、新たな一歩。
長嶋さんが描く水の中の生き物たちの絵は、これからも人を惹きつけ、人を繋げていくのだと思います。

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魚の絵の向こう側には、まるで大きな海が広がっているよう。

私たちが知っている魚や海というものは、ほんの一部分であり、私たちが見えている世界は、膨大な時間の流れの中の、小さな点でしかないかもしれません。
夜空を見上げたり、土をいじったり。定期的に自分のちっぽけさを感じることは、傲慢な心にならないための一種の健康法のようで、長嶋さんの絵はそれと似ている気がします。

小さくて、愛しい、一つ一つの存在。それは、人も、魚もきっと同じ。
そのままの姿に、美しさも強さも、きっともう既に宿っていることを教えてもらった気がします。

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この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

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