ドキュメント“ものをつくるということ”

手づくりと大量生産の中間を目指す。小さなノートが伝える、新しい「ものづくり」の形。<プロダクトデザイナー・菊田洋次×建築家・岩間航インタビュー>

手づくりと大量生産。
白か黒ではなく、グレーを作れないか。
真逆に位置する、二つのものづくりの中間を。

そんな想いから、小さなノートがうまれました。

プロダクトデザイナー×建築家が考えたノート

企画をしたのは、プロダクトデザイナーの菊田洋次さんと建築家の岩間航さん。
(写真左:岩間さん、右:菊田さん)

20131125-IMG_2485

菊田さんは「ライトミル」というブランドで、木や石を組み木のように合わせたアクセサリーを
中心とした制作活動をしています。2009年にはミラノサローネに出展。そこで発表したライトは、岩間さんが経営する西荻窪の「+カフェ」「+床(タストコ)」という空間で静かに存在感を放っています。

岩間さんは、店舗や住宅のリノベーションや設計を手がけている建築家。その傍らで、カフェとレジデンシャルホテルを営む経営者でもあります。

二人は、岩間さんが経営する+カフェで出会い、すぐに意気投合。デザイナー同士がデザインについて
多くは語らない日本で、「しゃべりたかったことが爆発した」と二人は笑いながら振り返ります。

人の手の温もりを求める
時代の流れ

普段はプロダクト業界、建築業界という異なる世界に属しながらも、共通しているのは「ものづくり」に関わる仕事をしているということ。

その「ものづくり」を真ん中にした、作り手と使い手。

使い手の視点でみると時代の流れは、プラスチック製の大量生産品より、人の手の温もりを感じられるものを求める人たちが増えてきています。最近では、いくつもの手づくり市が全国で開催され、人気を集めているようです。

一方、作り手の視点からすると、手づくり市やフリーマーケットに人が集まることで過去の時代より、ものを作って売ることのハードルは低くなったと言えるかもしれません。

20131125-IMG_2397

人の手のぬくもりを残しつつ、ある程度システム化する。

ところがこだわりをもち、手をかけてつくったものが、たとえ売れて作家と呼ばれるようになったとしても、壁にぶつかっている人たちが多いといいます。

手間がかかりすぎて利益は出ず、生産に追われて、消耗戦となる。どんなに働いても残業代が出るわけではなく、自分の身を削ってものをつくり続けると、次第に楽しさも失われてくる。

「人の手のぬくもりを残しつつ、ある程度システム化する。
そのバランス感覚が大事だと思う。」

菊田さんと岩間さんは、冷静に、でも力を込めてそう話します。
「もの」の中に入り込むだけでなく、「もの」を外から俯瞰することも必要だと。

作ったものを、市場に出して、誰かにお金を払って買ってもらう。
どんなにいいものを作ったとしても、それを使い手に届けられなければ、そしてまた作るための資金を稼げなければ、ものづくりは継続できないのです。

20131125-IMG_2521

作り手と使い手に「開かれている」ノート

二人が作り出した、木の軸をもつリフィルノートは継続できる「ものづくり」の形を目指しています。
その形とは、作り手にも使い手にも「開かれている」ということ。

まずは、作り手。
実は現在、菊田さんが一つずつ手作業で作っている訳ではありません。フリーマーケットで出会った、若手の木工作家に依頼をしているのだそう。

「この人でないと作れない」というデザインにするのではなく、あえて自分で作ることを手放す。そうすることで、新たな作り手と繋がることができ、新しいアイディアも生まれてくる。

そして経済的に見れば、若手の作家に、安定的な収入源を供給していることにもつながっています。
それは、芽吹いたばかりの才能に水を注ぐようで、大きな視点でみれば「ものづくり」に関わる人を
育てているようにも見えるのです。

20131125-IMG_2488

いかに隙間をつくるか

そしてこのノートは、使い手にも開かれています。
表紙や中身の使い方は自由。写真用のファイルを入れれば、フォトブックに。水彩用紙を入れれば、スケッチブックに。

「いかに隙間をつくるか。他のものが入り込める余白を。」

これは、岩間さんの建築やプロダクト制作に共通して、大切にしている考えの一つです。

「木」という自然素材もまた、たくさん隙間があるのだそう。年輪があったり、人間でコントロール
しきれないものがあるからこそ、他のものが入り込める隙間があり、受け止めてくれるのでは、と岩間さんは言います。

20131125-IMG_2481

木や石を使ったアクセサリーを制作する菊田さんも、木の魅力についてこう話します。

「天然素材は、自分ではコントロールできない大きなエネルギーに触れている感じ。
プラスチックは人間の作為的に計算通り作られているから、未知数に触れられる安心感というものを人は求めるんだと思う。」

完成しているけれども、完成していない。
作る場面にも、使う場面にも、そういう隙間をつくっておくことで、人の想像力をくすぐったり、変わっていくことを楽しんだり、新しい仲間と繋がることができたり、可能性は大きく広がっていきます。

20131125-IMG_2418

いま、この時代の「ものづくり」

手づくりと大量生産。
その二つの間に大きく広がっている溝はもしかすると埋めていくことができるのかもしれません。
ハンドメイドしかなかった時代に逆戻りはできない。安くて便利なものだけでは満たされないことも
私たちは知っています。

いま、この時代に合った「ものづくり」とは。
いま、この時代だからこそできる「ものづくり」とは。
この小さなノートから、そのヒントを学んだような気がします。

20131125-IMG_2514

お知らせ

この記事で紹介したノートはオンラインショップでも販売しています。こちらよりご覧ください。
banner_kichomen2

この記事を書いた人:

よりそう。の店長。ウェブマガジンの編集長、オンラインショップの店長業務を担当。2014年から、夫でもある社長・高崎と共に、東京から福岡へ移り住む。海と山とあたたかな人に囲まれながら、息子二人の育児にも奮闘中。

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocket
  • Lineで送る

記事への感想を送る

いただいた言葉たちは、大切に読ませていただきますとともに、こちらの連載にてお返事させていただいております。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

メッセージ

このフィールドは空のままにしてください。